2018年1月30日火曜日

鏡合わせの街、ウィーン(あるいはミリオポリス)

 ペラペラペラペラ……。

 紙の薄さとか人の話し声の擬音ではないです。資料を読んでいる様子の表現です。
 
 ずっとブルーテガルのため、主に中国の政治・文化や、家族生活に関して調べ続けています。
分からないことや想像しにくいことが多いんですよね……。自分からは大変に遠い世界というだけでなく、今まであまり積極的に手を伸ばしてきた分野ではなかったので。

 インプットとアウトプットの両立に苦労する日々です。夏コミの申込(重要)にもいい加減取り掛からないといけないのに、ああ”ー。
 
 息抜きがてら、資料を借りに行った図書館に偶然所蔵されていたこの本を読みました。

 
30年近く前のホントは思えない綺麗さ。ウラを返せばあまり読まれて……(震え声)

 
 ロート美恵さん『「生」と「死」のウィーン』です。
 
 冲方さんのブログで、シュピーゲルの着想を得た本として紹介されていたこの本。詳しくはぶらりずむ黙契録: シュピーゲル・シリーズ完結を見てネ。

 30年近く前の出版、冲方さんが再読されたころには著者の方さえ既に亡くなっていたような(世紀末《ファン・ド・シエクル》をご自身で越えることなくこの世を去られたそうです。黙祷)申し訳ありませんがどマイナーな新書です。正直、これのどこがシュピーゲルにつながっていくんだろう?と半信半疑な中、表紙を開きました。

 ところがどっこい(死語)、その中には世間一般に流れるウィーンのイメージを覆し、のちのグレートどマイナー感動SFスペクタクルハード戦闘少女ラノベ(過多):『シュピーゲル・シリーズ』につながる要素が確かにありました。

 表題の通り、この本はミリオポリスことウィーンという街に脈々と息づいてきたという「生(命、あるいは性かもしれなお)」と「死」という相反するイメージを、数々の逸話や芸術作品から紹介しています。「生」はともかく「死」という印象をウィーンに持っていた人は少ないのではないでしょうか。

 少なくとも一度旅行で滞在しただけの僕が持っていたのは、お洒落な街並みに優雅な音楽が鳴り渡る都、というステレオタイプな感覚だけでした。しかしのっけからそんな僕の悠長な気持ちは、右ストレートで打ち砕かれます。ハプスブルク家最後の皇后、ツィタの葬式のシーンで始まるんです!

 ハプスブルクという大変に大きな存在感を持つ一時代の終焉―ーそれを前にしてざわめき不穏な姿を見せる街=葬式の列について回る下世話な人々/皇族や葬儀にかこつけた商品を勝手に売る烏合の衆/永世中立国・共和国となった国の中できりきりと音をたてる政治。そこに優雅さは少なく、ただ不穏な空気だけが流れていたようです。

 まさにこんな街を、僕たちは知っているはずです。
 
 経済発展、国際交流、平和と発展をうたいながら「ロケットの街」と揶揄され、貧困や凶悪犯罪から逃れられない壱百万都市:ミリオポリス。

 冲方さんが創造し、描き出したあの街はこの先にあった(ある)と思わせてくれます。

 字幅の関係で割愛しますが、この本の中では他にもシリーズ内で重要な位置を占めた事柄の元ネタをたくさん知ることができます!

 テスタメントで重要な戦場とされた中央墓地、シリーズで大活躍したスーパー脇役(?!)、「蟻人間」ことオットー・千代田・ワイニンガーくんのモデル、などなど。ホンモノのオットーくんは結構世界史に一撃を加えていたようですよΣ(゜゜;)

 現在では大きな図書館などでないと読むのは難しいかもしれませんが、ぜひ探してみてください~。シュピーゲルファンなら絶対損しません!

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