2017年12月23日土曜日

コミケ新刊:シュピーゲル本情報更新!

今日は良い天気でしたね?(ひと月黙っていたことはスルー)

2020夏コミがゴールデンウィーク開催とのニュース、インパクトありますね……。
流されてしまうかもしれませんが、来週末の冬コミへ持ち込むものの内容が確定したのでお知らせします!

既刊に加えて、

蛭雪を主人公にした「シュピーゲル」二次創作
「ブルーテガルシュピーゲル」の導入部分
小冊子にして無料配布します!

ガラスさんの書いてくださった表紙、アリガタイです(;人;)
ブースに来て頂ければこのイラストに加えてもう1枚お手元に。

「ブルーテガルシュピーゲル」
(表紙イラスト、本文導入部とモノクロ挿絵1枚を掲載した小冊子版)
著:川口 けいた
絵:ガラス
A5判/16P/コピー本/無料

 当該小冊子はブースに来て声をかけてくださった方限定でお渡しします。
 掲載内容のネットでの公開や通販も現在未定で、実際に足を運んでくださった方だけに特別にお見せする形です。

 導入部分てなんやねん、と言われるとマイイヤーが大変にペインを発します(汗)。
 実は本作は約10万字の長編を目指してスタートさせました。
 そこまでの文字数を書くのはかなり久々で、恥ずかしながら執筆が大変に難航しており。
 皆様のご笑覧に耐えうると自分が納得できる部分までを頒布させて頂くことに相成りました。

 夏コミには……夏コミには必ず完成させて持ち込みます!

 ガラスさんの美麗な蛭雪と陸王のイラスト(←重要)と、不肖私の原稿を少しでも早く見たいとおっしゃってくださる精鋭の読者の皆様、
 
 来週土曜、コミケ2日目東サ10bにてお待ちしております!!

以上、久々の投稿過ぎてキャラを忘れた川口でした。

2017年10月30日月曜日

la la larks二次創作小説『loop』最終第4章公開!


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畠山に激励されたみつほはついに『彼』と、
そして自分の気持ちと向かいあう。
くじけそうでも、目を合わせて笑ってみせるために。
散々な毎日でも、私はーー
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『loop-廻る私を置いて行く-』
作:川口 けいた/各章扉絵:ガラス(後日公開)






最終:第4章.


 その週の木曜日の朝、みつほはいつもより一時間以上早く目覚めた。アラームも使わずに。
 起き上がり、おもむろに窓を開ける。天気は秋晴れで、少し冷たいけれど気持ちの良い風が吹き込んだ。

 顔を洗って、普段なら食事をとるところだったが、今日はいきなり掃除を始めた。溜まっていた服を洗濯機に放り込み、布団を干して、部屋中に掃除機をかけた。ベッドの裏に原因不明に落ちていた小物や、引き出しの隙間に曲芸的に入り込んでいた服なんかを発見しつつ。

 「よし」
 自然と声がもれ、満足感&達成感と共に時計を見ると、ちょうど通常起床する6時過ぎだった。まとめた要らないものやホコリは、空っぽだった一番大きいサイズのゴミ袋をぱんぱんにするほどだった。

 お腹が鳴る。身体を動かしたせいだろう。レトルトのご飯を用意して、インスタントの味噌汁をつくり、冷蔵庫の奥から漬物を引っ張り出した。そんなものかと侮るなかれ。朝食に液体以外を摂取したのはいつぶりだろう?
「いただきます」
なんとなくそういう気になって、机の前できちんと手をあわせた。テレビもつけないで、無言で食べた。温かくて、美味しかった。

 食べ終わったら化粧を20分かけて行い、スーツに着替える。今しがた役目を完全に果たしたゴミ袋を手に持ち、このスーツもそろそろ買い替えようかなどと思いながら外へ踏み出すと、秋晴れの空が広がっていた。抜けるような青空に適度な温度の風が吹いて、とても気持ち良い。しばし立ち止まり、味わった。

 忘れずにゴミを出し駅に着いて電車を乗降する間ずっと、みつほは色々なことを考えていた。それらは時期の差こそあれど全て過去の物事だった。特に社会人になってからの、楽しかったこと、嬉しかったこと、辛かったこと……記憶の中のどの景色にも常に、ある人物がいたことにみつほは改めて気づいた。
 結構見ていたんだなあと驚き、感心した。自分をほめてやりたくなった。

 「おはようございます!」
 到着して朝イチの挨拶もいつも以上、妙に大きな声を出してしまって、何人かに振り向かれてしまった。
 「お、おはようございます、円さん」
 畠山までちょっと驚いている様子。
 「なに?引き気味じゃん」
 「いや、そんなことは」
 「ジョーダンだよ」
 慌てた様子で首を振る畠山に近づいて、声をひそめる。

 「今日、課長と飲みに行く」
 息を呑む気配。
 「それは」
 しばらく間が空いて、畠山はようやく言葉を続けた。
 「……楽しんできてください」
 上目づかいで、なぜだか汗までかいている。
 「楽しんで、って顔じゃないよ、ばーか」
 笑って小突いた。



 夜。
 
 すでにみつほは歩き出していた。『彼』と並んで。

 『彼』の婚約を知ってからのおよそ2週間の内で一番くらいの熱量で仕事にあたったみつほは、充実感と達成感と共に職場を後にした。ぴったり定時に。

 定時あがりだったのは『彼』も同じだった。つまるところ連れ立って帰路についたわけで、妙な噂をたてられやしないかという危惧がみつほにはないわけではなかった。しかし『彼』は全く気にした様子もなく。

 “じゃ、行こうか。円くん”

 出がけにそんなことを言ってみつほの肩を叩き、席を立ったものだった。その様子があまりに自然かつ颯爽としていたので、同僚たちもごくためらいなくみつほに何事かと尋ね、みつほ自身もよどみなく答えた。

 “ちょっと悩んでることがあって”

 それは事実だったから、たとえみつほが仕事に関して、と添えなくても同僚たちは勝手に解釈してくれただろう。単に優れた上司として迷える部下の相談に乗ってやるのだ、と。
 そう思うようにした。どうせ強弁したところで邪推する者はする。大体そんな悪気があったら木曜日なんて指定しない。

 『彼』はみつほより背がずっと高くて、歩幅も大きい。それでもそんなに離されることはない。自分の歩く速さにあわせてくれているのだと察する。

 「お店、こっちであってたかな」
 『彼』に問いかけられる。みつほは微笑んで答える。
 「はい。あまり覚えていませんか?」
 「うーん、あの歓迎会の時以来だからね」
 『彼』は困ったようにはにかむ。かわいらしい、などと不遜なことを内心で思う。

 目指す店はみつほが予約した。自分で段取りをつけたかったし、行きたい店があったのだ。『彼』がみつほと同じ課に来た時歓迎会で使った、思い出のイタリアン・レストラン。

 「婚約者さんは、怒りませんでしたか?」
 リラックスした、だけど臨戦態勢の気持ちで、自然に踏み込む。
 「特にそんな様子はなかったね。信頼してくれていると思うよ」
 ごくさらりと返される。瞬間、爪先がぐらついたような感覚。気のせいだ。足はしっかり地面を踏みしめて、みつほは『彼』を見上げている。

 「それは、嬉しいですね」
 みつほは心からそう言った。
 「本当にね」
 返ってきた言葉も、心からの気持ちに溢れていると思った。

 店に到着して、みつほたちは他から離れた奥の席に通された。予定通り。予約するときに指定したのだ。
 この店は静かで食べ物も美味しかったから、みつほは先の『彼』の歓迎会の後も気に入って使っていた。だから提案した時、『彼』がその後一度も行ったことがないと知ってぴったりだと思ったし、予約するならあの席だと決めた。

 「懐かしいな」
 『彼』は薄暗い店内のあちこちを見回している。みつほはメニューを差し出した。
 「何、飲みますか?」
 「イタリアンなら赤ワインかな」
 「じゃあ私は、シャンパンで」

 段取りを全て女がつけるなんてヘンかもしれない。でもみつほは気にしないことにした。
 これはエゴだ。
 私は、私が完璧に吹っ切れる状況で、さよならに逃げ込みたい。
 たとえそれが過ちだったとしても。



 「それで、今日はどうかしたのかな」
 乾杯して前菜を楽しみパスタを待つ間、『彼』がさらりと問うた。

 来た、とみつほは思う。

 「どうって?」
 問い返すと、『彼』は苦笑した。
 「円くんが話したいことがあるって言ったんじゃないか」
 「まあ、そうなんですけど」
 濁し気味に返して、シャンパンを口に含む。喉が渇いていた。

 「僕は驚いたよ。知り合った頃以来だと思ってね」
 それは事実だ。フラッシュバックする。
 『彼』が課に来てまだ間もない頃、ただの先輩と後輩だった時。
 みつほは何度かこんな風に飲みに連れて行ってもらっていた。仕事の愚痴を聞いてもらうために。一部の下心を持って。
 そのたびに的確な答えをもらえて、気持ちはいつもすっきりしたけれど、それ以上のことが起こることはついぞなかった。あの頃から、目は。

 振りほどいた。

 「確かに、言われてみれば。懐かしいですね」
 ちょっと笑って、言葉にのせて記憶を追いやる。
 全て過去のことだ。
 私は今、この人の前に座っている。

 「実は、先輩に、ずっと黙っていたことがあって」
 心臓の鼓動が早まっていく。お酒のせいだけではない。
 喉が渇いて仕方がない。からからだ。声が震えていないか不安になる。
 「言おう、言おうとは思っていたんですけど」
 余計な前置きを重ねてしまう。たった一言だけなのに、本当に伝えたい言葉を言い出せない。
 長くしまいこんで、眺めているばかりだったから。引っ張り出すことさえ難しくなってしまった。
 それでも。

 「先輩がとっても幸せだって分かってるんです。こんなわざわざ連れ出してまで、邪魔して水差して、言うようなことじゃないって分かってるんですけど」
 『彼』は黙っている。続きを促しているつもりなのだろう。
 内心では不審がられているのではないか。
 怖くて怖くてくじけそうになりながら。
 それでも。

 「好きです」

 伝えるべき言葉を、口にした。
 時間が止まった気がした。

 もちろん気のせいだった。『彼』が一瞬目を丸くした後真顔になった表情の動きが見えたし、タイミング悪くパスタを持ってきたウェイターが現れたからだ。空気を察したのか、皿を置くと何も言わずすぐに去ってくれたのは幸いだった。

 「……今日は驚かされることが多いな」
 ウェイターが消えて、それでもなおたっぷり間がおいたのち『彼』はそう呟いた。独り言みたいだった。
 「ごめんなさい」
 思わず伏し目がちになり、謝罪が口をついた。

 「なんで謝るんだ?」
 「だってやっぱり、先輩にも婚約者さんにも失礼だし、私の自己満足で、迷惑にしかならないし」
 謝るくらいなら言うなという後悔の念が洪水のように降り注ぐ。

 「そんなことはない」
 遮られた。
 反射的に顔を上げる。剣な面持ちで真っ直ぐにこちらを見つめる『彼』の顔が眼前にあった。
 「とても嬉しかった、ありがとう」

 その言葉によって、みつほは歓喜と恐怖に同時に襲われるというかつてない経験をした。
 否定されなかったという嬉しさが前者で。
 その先を聞きたくないという怯えが後者で。
 そしてどちらの気持ちも、目を合わせて向き合えという意志でねじ伏せた。

 「だけど、すまない」

 『彼』が言い終わってからもたっぷり10秒近く、みつほは目をそらさなかった。それだけかかって、なんとか自分を許してあげられると思った。

 「分かってます」
 力を抜いて、椅子に深くもたれる。
 「課長こそ謝らないでください。私が勝手な気持ちを、勝手に伝えただけです」

 『彼』はまだ姿勢を崩さない。真面目に続ける。
 「なら僕だって、勝手に謝っただけだよ」
 「ええ?屁理屈ですよ」
 思わず少し吹き出した。それで安心したのか、ようやく『彼』の表情もほぐれた。

 「いつから、だったのかな」
 「うーん」
 考え込む。改まって尋ねられると、はっきり答えられなかった。
 「初めて会った時、かな」
だから、自分がそうだと思いたいことを伝えた。

 「なんてこった」
 『彼』がおおげさに天を仰ぐ。
 「僕も鈍感だな」
 「ホントです。いざ結婚してから、奥様のご機嫌損ねないように、気を付けてくださいね」
 冗談めかして言うと、『彼』も訳知り顔で答える
 「恐ろしい問題だな。ぜひ指導してくれ」
 「昔の課長みたいに?」
 「ああ。女心に関しては君の方が先輩だ」
 「なんですか、その表現」

 みつほは今度こそ相好を崩した。
 恐怖も悲しさも消えて、充足感と楽しい気持ちだけが身体を満たしていた。
 「パスタ、食べましょ。冷めちゃいますよ」
 『彼』と目を合わせて、笑ってみせた。

 

 「……それで、その後はどうしたんですか」
 以前のように並んで座る畠山が尋ねた。数日後、例の畠山行きつけのバーカウンターにて。 
 店内は少しも暑くないのに、畠山はまたもやなぜか大汗をかいている。多汗症なのだろうか。

 「どうもこうも。美味しくゴハン食べて、帰ったよ」
 こいつは相変わらず変な後輩だなと思いながら、みつほはグラスを傾けた。今日は梅酒のロックだ。
 店内には今日も他の客はいない。バーテンさんも引っ込んでしまった。大丈夫なのだろうか。

 「お互いに話題にすることもない感じですか」
 「そりゃないでしょ。私はあの場でカンペキに振られて、それで終わり」
手元にはこれまた例の海老のアヒージョがある。みつほは一尾フォークに刺して口に運ぶ。

 「うわ、ホントに、梅酒でも合うね」
 すっかり気に入ってしまって、ぱくぱく食べる。
 「言った通りでしょ?いや、まあ、それはいいんですけど」
 畠山はその隣でもごもご呟いている。
 
 「じゃあもう、全然引きずってない感じですかね」
 「全然?うーん、100%ではないけど」
 「あ、や、やっぱりそうですよね、すみません」
 「理由もないのに謝らない。前も言ったでしょ」
 肩のあたりを軽く小突いた。

 「お望み通り、バーンと指導してあげたつもりなんだけど」
 「あっ、はい!ありがとうございます!!」
 畠山は馬鹿正直に答えると、背筋を伸ばしてかしこまっている。
 抜けてるというか、真面目過ぎるというか。
 からかってやりたくなった。

 「しっかりしてよ。畠山君、この間は余裕ある感じで、ちょっと格好良かったからさ」
 囁く。
 畠山は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。
 「こ、こ、この間、かっ、格好良かった、というと」
 「畠山くんが鳩みたいに……、ハトヤマくんじゃん。あはは、面白い」
 この間の余裕も一瞬繕ったのもどこかで失くしてきてしまったかのように慌てだす畠山を尻目に、みつほは一人で楽しくなって笑っていた。
 


 毎日は散々だ。
 自分自身につき続けた甘い嘘は、実現することなく終わった。
 相変わらず部屋は汚いし、朝は憂鬱だし、新しいスーツも未だに見繕えていない。
 『彼』と接するたび、残りカスみたいな想いが降って湧いたように胸の中を走り回る時もある。

 それでもみつほは、自分は大丈夫だと思った。
 決めたから。

 立ち止まらないことを。



 fin.

2017年10月15日日曜日

la la larks二次創作小説『loop』第3章公開!

こんばんは(既視感)。

もう前置きはやめましょう……。

la la larks二次創作小説『loop』第3章公開します!

ここまできたらもう逃げちゃいけない、進むしかないのです。

例えこれが過ちだとしても!

この3章では革命的に話が動き、最終章になだれ込みますよ~お楽しみください!!


↓↓↓本編は以下から始まります。↓↓↓


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畠山に飲みに連れ出された。
思いもかけない出来事に戸惑い、みつほは揺れ惑う。
その振動は心のがらくたの城を壊し、
奥底にあった気持ちを露わにした。
情けないくらいーー
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『loop-廻る私を置いて行く-』
作:川口 けいた/各章扉絵:ガラス(本章では扉絵はありません)

第3章.


 風がぴゅうぴゅう音をたてる。みつほは縮こまるようにして、知らない街を歩いている。

 まだ少しやる仕事があると言うので、畠山とはいったん別れた。再度落ち合う場所として指定されたのは、職場からもみつほの家からも何駅か離れた繁華街だった。

 “よく行く、良い店があるんです。”

 畠山はそう言っていた。気乗りしなかったが、職場の近くで知り合いに会うのも嫌だったので受け入れた。

 気が進まなかったのは正しい反応だった。平日の夜だというのに人がたくさんいて、あちこちでお店の灯りが見え、そこに集う人間の声が聞こえる。電車から出てしまえばあとは家までひとけなし、という生活に慣れている身には疲れる。
 やはり断ってしまえばよかったのだ。畠山の奴と二人きりで飲みに行くなんて、これが初めてくらいなのだし。気の迷いだったと思う。

 けれど、畠山の誘いに乗ってからの一度家に戻るまでの帰路、ほのかに気分が上向く自分も感じていたのだ。
 どの服を着ようとか、お化粧はどうしようとか。久しく忘れていた感覚だった。
 畠山なんぞで構わないほど飢えていたか、と自分を自分で嘲る。そして勝手に落ち込む。
 きっとあんな気分さえも気の迷いだったのだ。
 棚の奥から引っ張り出してきた高級なスカートも、めったに使わないブランドのカバンも、全部色あせて見えた。

 停滞する心とは逆にどんどん歩調は速くなり、人混みをかき分けるようにして進みながらもう今からでもUターンして家に戻ろうかとまで思ったその瞬間、みつほは待ち合わせ場所に着いてしまった。

 駅の正面広場を少し進んだところにある、大きな時計の下。定番の待ち合わせスポットとしてみつほでも名前くらいは知っていた。老若男女、等しく誰かを待っているであろう人がたくさんいる。

 知らず知らずのうちに首をひっこめ、うつむきたくなる。今更戻ることはできない。いや、待ち合わせた時間には未だ早い。畠山はまだ来ていないかもしれない。体調が悪くなったとか言って帰ってしまえば。
 そういう逃避的な思考は、足踏みしてたまたま身体を向けた先にいた畠山と目が合うことで粉砕された。

 「あ」
 畠山がぽかっと口を開ける。向こうも着替えていた。ほとんどスーツ姿しか見たことがなかったので、なんだか別人のように見えた。

 「あ、って何よ。先輩だよ」
 気持ちが逆転して、不機嫌な言葉となって口をつく。
 「あ、いや、すみません」
 慌てたように謝る。また同じ言葉を使っているのはわざとなのだろうか。
 「スーツ着てるところしか知らなかったので、なんかびっくりしちゃって」
 「格好つけてるって思った?」
 とげのある言葉を、刃物みたいに押し付けてやりたくなる。
 
 「そんなつもりじゃ」
 畠山の戸惑った様子に暗い満足感が湧く。ほら見ろ、私はこんなに嫌なやつだ。
 ただその気持ちも、続けられた言葉にしぼみこんだ。
 「その、こんなこと言うとアレかもしれないですけど、すごく綺麗だと思います」
 「……あっそ」
 結局それだけ言って、みつほは誤魔化すようにぷいとあらぬ方向を向いた。調子が狂う。
 
 「ええと、お店、こっちなんで。行きましょうか」
 畠山が待ち合わせた広場につながる大通りを歩き出す。慣れているらしく、人混みの中にも関わらずすたすた進んでいってしまう。前を歩かせるのは嫌だったので、遅れないように急いだ。

 お店は通りの途中で一本逸れた裏道にあった。ほんの少し奥に入っただけで急に人通りも灯りも減って、薄暗くなった中にぽつんとあった。
 「こんばんはー」
 畠山が間延びした口調で声をかけながら入っていく。みつほは慣れない雰囲気に一人でどぎまぎしていた。
 店内は狭く、カウンター席しかない。内側にはきちんとした格好で立つ初老の男性がいて、無言で微笑み会釈をしてくれる。男性の背後にはずらりとお酒の瓶が並んでいて、どうやらバーのようだ。お客はみつほたち以外に誰もいなかった。

 「カルアミルクとアヒージョ」
 畠山は座った途端、さも当然みたいな様子でバーテンとおぼしき男性に頼む。
「何その組み合わせ。普通ワインとかでしょ」
 「美味しいんですよ、ここのアヒージョ。何にでも合うんです」
 気にした様子もない。妙に泰然としているのがしゃくだ。仕事中もこれくらいの余裕を見せてほしい。
 「私はブラッディマリーで、お願いします」
バーテンさんが視線を向けてくるので、みつほもちょっと慌てて頼んだ。
「濃いめで」
とっさに一言添えて。

 「怖い名前のお酒ですね」
 手早く出された真っ赤な液体に、畠山が目を丸くする。
 「知らないの?」
 「ここじゃこれしか飲まなくて」
 対称的に白い液体が入ったグラスが掲げられる。
 「お子様」
 言いながら、みつほも自分の杯を手に取った。
 バーテンさんはおすすめのアヒージョとやらを作るべく、奥に引っ込んでしまっていた。みつほたちしかいない空間に、金属同士が触れる音が響いた。

 「でも、来てくださってありがとうございます。秒で断られるんじゃないかと」
 お互い一口飲むと、畠山はしみじみとした調子で言った。
「どういう奴だと思ってんの」
 みつほは早くも二口目をあおる。身体がかっと熱くなった。辛口の味付けに頭がしびれる。本当に濃くしてくれたようだ。
 「私だってそういう気分になることもあるよ」
 
 「そういう気分?」
 「さえない後輩の誘いにもついて行きたくなっちゃうくらい弱った気分ってこと」
 1秒前まで考えてもいなかった言葉が口から飛び出た。
 何を言っているんだと押し留めようとする自分をアルコールが殴りつけてのす。びりびりする電気が喉をつたって身体に行き渡り、むちゃくちゃに動かしている。
 
 違う――グラスを傾けるのはみつほの手で。こんな風に思いもよらないことを言わせるのも、また自分で。
 「弱ってるん、ですか」
 遠慮がちな反応が刺激となり、みつほをさらに踏み込ませる。

 「そう。そうだよ。私弱ってんの。もう家に帰るのだって億劫なくらい」
 畠山の方に顔を向けてしなだれかかった。
 「ね、このあと、あんたの家行こっか」
 2人の肩と肩が触れ合っている。一方の筋肉がこわばったのが分かった。

 「……円さん、酔ってますね」
 「こんなんで酔わないよ。飲むのなんていつものことだから慣れてる。私ね、片付けもしてないきったない部屋で、毎日一人で晩酌してんの」
 本当に熱い。勢いよく飲み過ぎ。くらくらしそうだ。でも口から溢れてくる言葉は冷水みたいに冷たくて。どんどん自分の心を寒々しくさせる。
 「ね、いいじゃん。畠山君もそういう下心少しはあったでしょ。なんで黙ってるの?え、もしかして私がこんなだって知ってドン引き?もうムリ?ほら何か言っ」
際限なく持ち主を傷つけようとしていた唇の動きは強引に止められた。

 別の唇によって、とかそういうロマンチックな展開ではない。
 畠山がいきなり腕を伸ばして、手のひらをみつほの口に当てたのだ。
 みつほは驚いて反射的に息を止めた。口を閉じようとして、当然のように噛みつく形となった。
「いって」
 畠山が顔をしかめる。その声に我に返ったみつほは、あわててぱっと離れた。
 
 「バカ。アホ。キモい」
 両手で口元を覆って、こもった声で畠山を罵倒する。歯にまだ感触が残っていた。
 「ひどいっす」
 手をぶらぶらさせながら畠山は微笑む。
 「でも、元気になったみたいで、良かったです」
 「元気なんて」
 もっとこきおろしてやろうとしたところで、みつほははたと黙り込む。自分を痛めつけるような酔いも、凍えるような悲しい気持ちも全部吹き飛ばされてしまっていた。

 悲しい?
 
 「どうしたらいいか分からなくって。とっさに手が伸びちゃいました。すみません」
 畠山はまた謝っている。謝るくらいならやるなと思ったが、言葉にはできなかった。
 視界が歪む。
 申し訳なさそうに微笑んでいた畠山が急に真顔になる。
 「元気なんて、出ないよ」
 みつほは言いかけたことを絞り出す。声は震えていた。
 
 「ねえ、畠山君、知ってた?私、課長に片思いしてたの」
 畠山は何も言わない。じっとみつほを見ている。
 「ありえないよね。こんな年になって、片思いなんて。でも、好きだった。すごく。だから、課長が、結婚するって知って、すごく、悲しい」
 城のように積みあがったがらくたに埋もれ、諦めと虚しさの膜に覆われていた気持ちはようやく理解された。
 言葉は切れ切れの小声にしかならない。涙が大粒の水滴となって目から流れ出て止まらない。顔なんてきっとぐちゃぐちゃだろう。
 ひどいありさまだ。こんなことをするつもりはなかったのに。バーテンさんがまだ現れないことを願った。
 畠山は相変わらず無言だ。何を思っているのだろう。みつほには分からない。男の気持ちなんて。

 「そうですか」
 長い沈黙の後、落ち着いた声がみつほの耳に届いた。
 「それはきっと、とても悲しいと思います」
 余計なことを添えない、抑えた口調だった。だから甘えた。
 「君に何が、分かるの」
 手で涙をぬぐいながらそっぽを向いた。店の年季の入った壁と向かいあい、畠山は視界の外へ。
 「分からないと思います。想像しただけです。自分が同じ境遇だったら、どんな気持ちになるか」
 「ほら。どうせ君みたいにのほほんとしてちゃ、失恋したことだって、ないんでしょ」
 「ひどいなぁ。どういう奴だと思ってるんですか」
 苦笑する気配+おどけるような気配。
 「真似しないでよ」
「仕返しです。僕だってそんなような経験くらいありますよ。しかも結構最近」
 「ふん」
 ようやく涙が完全に止まり、みつほは壁から手元へ目を泳がせた。気づけば、かすれ気味ながらも普通の声で話していた。畠山との会話が平静に戻してくれていた。

 「気になるじゃん。まさか、相談したいことってそれ?」
 「実はそうだったんですけど、ま、今日はやめときます」
 「なんでよ」
 そろそろと顔を戻す。畠山がまた現れる。

 「弱ってて、僕なんかに愚痴言っちゃう円さんには話したくないんで」
 その顔は微笑んでいた。
 「すごく仕事ができて僕にも自分にも厳しくて、でも笑顔を絶やさないのが僕の知ってる円さんです。いつもみたいにバーンと指導してくれないと、バーンと」
 「何それ。言ったでしょ、私の部屋とかぐちゃぐちゃで」
 自分はそんな人間ではない、と言いかけた。その前に畠山が被せた。
 「そういうところも含めて円さんっす。いいじゃないですか、今日は言いたいこと言い切って、ぐちゃぐちゃの部屋で寝ましょ」

 勢い込んで前のめりになった畠山の身体が近づいた。
みつほはそれまでと違う方向に胸が跳ねるのを押さえられなかった。
「それで、元気が出た時に僕の話も聞いて下さったら、嬉しいです」
正面から見つめられる。真摯なまなざし。
こんな顔もできるんだな、と思った。

 「分かった、分かったよ。今日は飲むわ」
 誤魔化すように杯をとる。
 「ありがと」
 最後にぼそっと付け加えた。畠山がからかうような表情になる。
 「結構びっくりしましたけどね」
 「うるさい」
 小突くふりをして、赤いお酒を飲もうとした。少し舐めてやめた。

 「すみません、ハイボールください。あとアヒージョってそろそろ」
 店の奥に声をかけると、言い終わらないうちにバーテンさんが戻ってきた。手には湯気を立てる海老のアヒージョの皿が乗っていた。パンが添えられている。
 「ハイボールもすぐお出しします」
 バーテンさんは初めての低くて渋い声でそう言うと、魔法のような素早さでハイボールを作ってくれた。

 「じゃ、改めて」
 畠山が自分の杯を掲げる。
 「カンパイ」
 声を揃えて、炭酸を流し込んだ。
 シュワシュワ、パチパチ、泡のように散々な気分が消えていく。
 あるいはもう消えていたことに気づいたのかもしれない。

 アヒージョの油にパンを浸して、一口食べてみた。
目を閉じる。噛みしめて、味わうために。
 「めちゃくちゃおいしい」
 「でしょ」
 


 明けた火曜日、みつほは例によっていつもの時間に職場に着いた。
 結局あの後、終電間際まで飲んでしまった。身体は重いが、気分はすっきりしたものだった。
 畠山はまだ来ていない。それほど強くないようで、昨日も途中からずっと顔が赤くなったり青くなったりしていた。多少気にはなるが、向こうから誘ってきたのだから同情はしない。サボったら二度と口を利かないと釘をさしておいたから、そのうち現れるだろう。

 むしろ、畠山が来ないうちに済ませたい用事があった。
 席を立ち、歩き出す。
 「課長、すみません」
 既に自分の席に座って新聞を読んでいた『彼』に声をかけた。
 「ん?」
 「今週、お時間ある日、ありませんか?」



ーー続く(10月29日公開予定)

2017年10月5日木曜日

la la larks二次創作小説『loop』第2章公開!

  
 こんばんは。

 la la larks二次創作小説『loop』第1章公開からはや2週間。
 マイナスが手をつないで目の前に立ちはだかる中、
 時間がたりない、足りてることがたりてないとうめきつつ、
 

 第2章を書き上げました!


 ひとりになると聞こえるんですよ……苦しいならやめていいと………
 でもやはり、僕は物語でla la larksを応援したいです!

 ラララの歌詞から引用させてもらいました。
 ちょっと強引でしたね(苦笑)
 どの曲からか当ててみてください(^^)



 ↓↓↓本編は以下から始まります。↓↓↓


ーーーーーーーーーーーーーーー

敬愛する『彼』の婚約を知り落ち込むみつほ。
目をそらしていた嫌なものにも気づかされ、諦めたように日々をなぞる。
そんな彼女に呼びかける者がいた。
良かったら、このあとーー

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『loop-廻る私を置いて行く-』
作:川口 けいた/各章扉絵:ガラス


第2章.



 目の前が真っ暗になる、という言い回しがある。食後の食器を洗いながら、そんなことあるわけないとみつほは自分に言い聞かせている。

 どんなに衝撃をくらって、心が弱っても、目を開けていれば風景は見える。世界の終わりが訪れたように感じていたって。青くて澄んだ空はそこにあるし。差し込む陽光は遠慮なく網膜へ届いている。暗くなったと思うなら、単にそれはとっさに瞼を閉じただけのことではないか。

 反射的にそういう行動をとるというのは、まあ考えられなくはないだろう。何かにぶつかりそうになったときとか。試しに目をつむってみた。暗くはなる。それでも光の存在は感じる。
 もしかしたら万に一つ、動揺のあまり自分が目をつむったことにさえ気づかない、ということはあるかもしれない。怒られるたびにぎゅっと顔をしかめて防御する自分の姿をみつほは想像する。おびえている子供みたいな実年齢二十八歳。

 「あほらし」

 みつほはわざわざ口に出した。そのせいで余計に認めた方が良い、という気分にさせられた。
 視界が暗くなんてなっていないけれど。言い聞かせるみたいにこんなことをわざわざ考えるなんて。
 どうも自分は『彼』が幸せになることに、少なからずショック受けているらしいと。

 “友達の紹介で知り合った年下の子と、っていう話だよ”

 あの日、同期は饒舌に話した。彼女に悪気はなかっただろう。みつほは仕事以外の『彼』の話を彼女にしたことがなかった。信用していなかったわけではないけれど、それとこれとは話が違う。『彼』に対する気持ちはそっと胸に留めておきたかったのだ。

 “仲の良い人との内輪の飲み会で、ちょこっとだけ話したらしくて。私はそこに参加した先輩に聞いたんだけど。ホラあの人”

 同期はそう言って他支店の行員の名を挙げた。みつほも知っている、来年にも課長になるだろうと言われている将来有望な男性だ。確かに『彼』とも年次が近いはずだった。

 “いやー聞けてラッキーだったわ。あんまりしつこく誘ってくるから、この間一回だけ一緒に飲みに行ったんだけど。あ、もちろん何人かでだよ?嫌々行った甲斐があったってもんだね~”

 まだ何か言っていたような気がするが、とてもみつほの頭には入っていかなかった。覚えているのは尋ねたことだけだ。

 “その、お相手は、どんな人なの?”
 “あ、やっぱり気になるよね!なんでもどっかのお嬢様大卒で。中学校からずっとそこに通ってた、みたいな。きっとお金持ちの家なんだろうねぇ。先輩は写真も見たらしくて、かなり可愛かったって。でも何がヤバいってさ、その子の年いくつだと思う?”
 “えっ……。私たちと、同じくらい?”
 “二十五だって。にじゅうご。十一歳差。犯罪じゃんね~”

 畠山より若く、あの人と知り合った頃の自分とほとんど変わらない年齢。とてもかなわないと思った。仲良くなったと浮かれていた今の自分でも。出会った頃の、何も知らなかった自分でも。

 どんどん気持ちが沈んでいく。止めて留めて、大事にしまいこんで、胸の奥底へ沈殿していって。今や腐臭を放っている。
 こんな自分は嫌なのに。足元がおぼつかなくなって、どこにいるか分からなくなりそうだった。

 確かめたくて、手に持っていた片付け途中のお皿をいったん置き、部屋を見た。みつほが暮らす1K。

 そこそこお気に入りの部屋だ。建てられてから五、六年しか経っていないし、防音がウリでいつも静かなもの。家具も別に高級ではないけれど、お気に入りのものでそろえた。自分だけの穏やかで落ち着ける部屋。お風呂とトイレも別だし。
 でも、そこは今、妙にくすんでいるようにみつほには見える。

 床には洗濯物や仕事のカバンが乱雑に投げ出されている。机の上には先ほど食べて置きはなしの惣菜パック。帰り道のスーパーで半額だったものだ。その隣には一緒に買って飲み干したお酒のカン。その下には出しそこなったゴミの袋がぱんぱんになって転がっている。
 今の今まで洗っていたお皿だって、いつから置いてあったか分からない。急に思い立って、だらだら流しに運んだだけ。

 あの日から、というわけではない。日々の生活は、ずっとこんな調子だった。
 始めから分かっていた――『彼』はこんなみつほなど、ただの後輩としか見ていないと。
 
『彼』に追いつきたくて、認められたくて頑張ってきた。
 四年前、仕事に慣れてきて、ともすればこんなものかとなめかけている節があった二年目のみつほは『彼』の有能さに一発でのされた。

 お客様のもとに足しげく通い、どんなにフワフワだったり急だったりする要望にもすぐさま的確に答え、融資につなげて実績とする。それを大変そうな様子さえ見せず、いつもにこやかな笑顔さえ浮かべてこなしていく。それが出会った時から変わらない、彼のやり方だった。

 『彼』のように自分も他人から見てもらいたくて。誰より『彼』に自分を見てもらいたくて。ここまでやってきた。そのおかげで、どうにか仕事ではそれなりに評価してもらえていると自負できるようになった。それでも。

 “ま、わたしたちは仕事が恋人だもんね!”

 話の終わり、同期が無邪気に言った言葉がささくれみたいに胸に刺さっている。
 そんなつもりじゃないのに。
 笑っていた同期だって、なんだかんだで男性からの評判は悪くないことをみつほは知っている。
 きっとえり好みしているだけなのだ。

 ぐちゃぐちゃした思いは一朝一夕では消えてくれず、行き場なく胸の中を走り回っている。こんなありさまになっても。もしくはこんなありさまになるほどに。

 時間がたてば、消えてくれるのだろうか。気持ちにふたをして、全部忘れて、生きていくことができるのだろうか。これからまだしばらくは職場で一緒に仕事をし続けるのに。あまつさえ、幸せそうに振る舞う『彼』の姿を見せつけられるのに。
 消えてほしい。消えると信じたい。そう考えるよう何度も自分に命じた。
 一方で、どうせしばらく、あるいはずっと無理だと冷笑しながら。

 気づけば24時を回っていた。身体に響いてくる時間。しかも明日は月曜日だ。
 「お風呂、入らなきゃ」
 自分に言い聞かせるように呟き、のろのろとバスルームに向かう。

 お湯が張れたら、さっさと入って、寝てしまおう。最近寒くなってきたから、身体をよく温めて。起きたら食事をして、いつも通りの時間に出て、仕事をすればよい。
 そうやって、同じ毎日をなぞっていけば……。




 翌朝、みつほは予定通り、まったくいつもの時間に家を出た。ルーティンに従ったわけだ。そうするのが一番楽だった。
 車窓を流して、下を向いて道を歩いて、気づいたら職場に着いていた。
 「おはよう、ございます」
 一瞬のためらいが歯切れ悪く現れた。何か気取られたのではないかと自意識過剰になる。もちろんそんなことはなく、まばらな返事があっただけだった。

 「っす、円さん」
みつほの課にいたのは畠山だけだった。相変わらずもごもごした口調だ。『彼』はまだ来ていない。

 カバンを置いて席に座って、パソコンを点ける。自分も機械になったみたいに手を動かしながら、みつほは目も向けずに畠山に声をかけた。
 「畠山くんってさぁ、結婚願望とかあるわけ?」
 排水溝が詰まったようなヘンな音が隣からした。見れば畠山がごほごほせき込んでいる。手にはペットボトル。飲もうとしてむせたらしい。

 「ちょっと、こっち飛ばしてないよね」
 嫌悪感を隠さず引き気味になる。
 「い、いえ、自分にちょっとこぼしただけです。すみません」
 畠山は口元をハンカチでぬぐいながら言う。ようやく落ち着いたようだ。
 「け、結婚願望ですよね。無くはないですよ。でも今は彼女もいないですし」
 伏し目がちな様子に苛々する。そんなだから彼女もできないのだと言ってやりたくなる。
 「ふーん」
 広げるのも面倒くさくなって、みつほはそれだけで済ませた。自分で聞いておいて酷いやつだと自嘲的に思った。

 その時、シチュエーションに急に既視感を感じた。
 記憶から立ち上ってくる風景がある。
 今の畠山の立場にみつほがいた頃、『彼』の指導を受けていた当時。同じような会話をしたのだ。
 ただし尋ねたのはみつほからだった。先輩は結婚とかしたいんですか?と。昔はもちろん今のように役職で呼んだりしていなかった。

 “もちろんしたいさ。今は相手がいないけどね”
 『彼』は朗らかに笑って答えてくれた。それを聞いたみつほはチャンスだと勢い込み、厚かましくも好みのタイプまで尋ねたのだ。
 “そうだなぁ。自分より年下で、行動力があるといいけれど。お互いのことを一番に考えられる相手ならあとはなんでもいいよ”

 自分こそそうだと言いたかった――結局思うだけで言わなかった。言わなくて正解だった。
 そんなものは全くの嘘で。現実は全然見当違いだったのだから。
 私の一番はあなただけど、あなたの一番は私じゃなかったんですね。

 時計を見る。もう朝礼の時間が近い。他の課員もそろそろ揃い始めた。『彼』はまだ来ないのだろうか。
 疑問に思ったちょうどその時、小走りで入ってくる『彼』の姿が見えた。

 「おはようございます」
 さっきの自分を打ち消すつもりで、少し声を大きくしてみつほは先手を打った。同僚もばらばら続く。
 「ああ、おはよう」
 『彼』が笑顔で答えてくれる。なんだか息をついている様子だ。

 「出るのが遅れてしまってね。年甲斐もなく慌ててしまった」
 尋ねる前に今度は先手を打たれ、みつほは急いで作り笑いをする。上手くできているだろうか?
 「珍しいですね」
 「ちょっと理由があってね。後で話すよ。……では皆さん、集まってもらえますか」

 全員が揃ったのを確認して『彼』は口を開いた。
 「今日は初めに、私事ですが報告をさせてください」
 みつほの心臓が跳ねる。来るものが来たと思う。
 「実は結婚することになりました」
 上手くやれ。みつほは改めて自分に命じた。震えそうになる身体をどうにかこわばらせるだけで抑えた。
 周りがざわめき、ささやかな歓声が起こる。

 「家も引っ越して、二人で住み始めたので慣れなくて。今日はこんなギリギリになってしまいました」
 「課長、出てきたくなかっただけじゃないんですか」
 同僚が茶々を入れる。
 「それもないとは言えないかな」
 『彼』が照れたように微笑むと、どっと笑いが沸いた。

 「式は年末を予定していて、皆さんも招待させてほしいと思っています。よければぜひ」
 一礼。皆が穏やかに拍手をした。
 「ありがとうございます。では、今日の予定から」
 その後はいつも通りの朝礼が続いた。
 みつほはずっと真面目な様子で聞いていたつもりだ。うつむき加減ではあったけれど、おかしくは見えなかったと信じたい。
 でも、上手くできた気なんて、全然しなかった。




 その日の仕事をみつほは流すようにこなした。お客さんにお会いするような機会もあったけれど、どのようなことを話したかろくすっぽ記憶に残っていない。申し訳ないとは思うが、心がついていかなかった。移動の道のりで吹きすさんだ風がとても冷たくて寒々しかったのは妙に覚えている。冬はまだ先のはずなのに。

 早く帰ってしまいたくて、就業時間を過ぎたら早々にデスクを片付けにかかるつもりだった。けれど身体は妙に重くて。気は急いているのに、なんだか遅々として進まなかった。そうこうしていたら、引き出しにしまおうとした書類を落としてしまった。音をたてて床に散乱するA4用紙の束。

 「うわっ」
 思わず声を出した。吐息が漏れる。
 いったい何をやっているのだろう。
 こんなことで、こんなざまだ。

 椅子の上から身を屈めて手を伸ばす。そのまま頭でも抱えてしまおうかな、と投げやりな考えがよぎったが、それは実現することはなかった。かわりに指先は、別の人間の腕に触れた。

 「あ」
 腕の主が間の抜けた声を出す。こちらを見て目を見開いている、畠山だった。隣の席からわざわざしゃがみこみ、書類を拾おうとしてくれたらしい。
 「す、すみません」
 畠山はすぐに下を向いてしまい、慌てた様子で書類を集めてくれる。みつほの視線の先に後頭部があって、もさもさした髪の毛と赤くなっている耳が見えた。

 「なんで謝んの……。ありがと」
 呆れて言い、立ち上がった畠山の手で綺麗にまとめられた書類を受け取る。
 「あ、いえ、すみません」
 肩をすくめて、結局また謝っている。それで済んだと思ったが、畠山は一向に席につこうとしなかった。

 「どうかした?」
 しびれをきらして尋ねると、畠山はしばらく挙動不審気味に目を泳がせたが、やがて意を決したようにみつほを見た。
 「円先輩、今日はもうお帰りですよね」

 「え?う、うん」
 妙に真っ直ぐ見つめられたので、みつほはなんだか身構えた。イスに座っているので見下ろされるようなかたちになっている。思ったより背が高いな、などと脈絡なく考えた。
 
「良かったら、このあと飲みに行きませんか。ちょっと、ご相談したいことがあるんです」
 畠山は視線をそらさないままそう言った。耳がまだ赤かった。


ーー続く(10月第3週公開予定)

2017年9月22日金曜日

la la larks アルバム発売お祝いイラスト&楽曲二次創作小説『loop-廻る私を置いて行く-』第1章公開!


こんばんは!今日は重大発表!!

先日からほのめかしていた原稿がひと段落つきましたので、冬コミまでの期間で行う新しい企画を発表させて頂きます!題して……


☆Newアルバム『Culture Vulture』発売記念☆
ロックバンド、la la larksお祝いイラスト
楽曲『loop』二次創作小説公開!


告知&お祝いイラストをサークル同志のガラスさんに描いて頂きました!
『ハレルヤ』のジャケットをオマージュさせて頂きました。内村さんと江口さんがお気に入り~

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円(まどか)みつほは至って平穏に今日まで生きてきた。
仕事は頑張ってこなし、周囲とも上手く楽しくやって。
ただ、ささやかなときめきに手を伸ばすと、そこには既に赤い糸が見えた。
ーーバカみたいだ。

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『loop-廻る私を置いて行く-』
作:川口 けいた/各章扉絵:ガラス


このブログでも前々からプッシュしているグレイトオシャレバンド、la la larksのニューアルバム『Culture Vulture』発売を記念して、お祝いイラスト
彼らの楽曲『loop』からインスピレーションを受けた二次創作短編小説
『loop-廻る私を置いて行く-』を公開します!

企画の発端はシンプルで、
待望の1stアルバム『Culture Vulture』発売に対するあまりの感動から、素晴らしいバンドであるラララを応援するために自分でも何かしたいと思ったからです。

僕は結成の年から、ラララのライブに年3~4回通っています。

ティーンの頃、その未来的で刃のようなサウンドと前向きな歌詞に大きな影響を受けたSchool Food Punishment。
その解散に打ちひしがれる中、ラララ結成を聞いてライブハウスに駆け付けた5年前の感動は今でも忘れておらず、
現在に至るまでどのライブも、楽しめないこと・不満を感じることが全然ありません。

文章の世界における、僕の心に食い込んだ楔が冲方丁さんとその作品なら、
音楽におけるそれがla la larksとその楽曲だと感じているほどの思い入れがあります。

いつも明日も頑張るための元気を与えてくれる彼らの楽曲とライブに対する僕の感謝を彼らに伝えたい。
そして彼らの存在をもっとたくさんの人に知ってもらいたい。
そのためには僕のフィールドである文章/物語によって、彼らの世界観を感じさせる作品を創るのが一番だと思いました。


そして出来上がった作品『loop~廻る私を置いて行く~』の第一章をこのブログにて早速公開します!
下方へスクロールしていってください。↓
少しでも楽しんで頂いて、ひいては着想元の楽曲『loop』に興味を持って頂ければ幸いです(^^)


※本作品はロックバンド、la la larksの楽曲に着想を得た二次創作作品です。
作中の表現は全て作者である川口けいたの責任によるものです。
楽曲の歌詞をオマージュした表現も現れますが、原曲に関する権利はアーティストに帰属します。
不適切な表現が発覚した場合には本作品の公開はすみやかに中止致します。



第1章.

 円(まどか)みつほの毎日は大変にせわしない。
 朝六時過ぎに起きると、顔を洗って食事をとる。食欲はないからジュースとヨーグルトくらい。ほとんど流し込む。

 その間に手は無意識にリモコンを探ってテレビをつける。そうはいってもじっくり見ているわけでもなくて、BGM替わり。切ってしまうと無音になって落ち着かないからだ。
 映像だってほとんど記憶に残らない。ただ、その時映っていたのは、どこかのテーマパークに新しく完成したアトラクションできゃいきゃいしている若い子たちの様子で。こういう時は少しだけ気持ちが引っ張られる。自分が失ってしまったもの、あるいはそもそも始めから持っていなかったものを見せつけられるからだろう。

 そういう雑念に囚われるのは止められないけれど、いい加減大人なみつほは対処法も心得ている。ジュースを一気飲みして一緒にお腹の奥へ流し込んでしまうのだ。そしたら化粧をする。せいぜい十分くらいだ。とてもそれ以上の時間はかけていられない。そんな暇があったら寝ている。

 買ってからだいぶ経ってしまったスーツに着替えてパンプスを履いたら、カバンを手に取りドアを開ける。マンション二階の廊下から見える空にはなんだか色が濃い雲が出ていて、どんよりしていた。季節は秋の入りで、風もなんだか涼しくなってきたような気がする。雨が降ってもおかしくはない様子。
 「天気予報、なんて言ってたっけ」
 呟く。もちろん思い出せない。嘆息するとみつほは階段へ歩いた。



 家から最寄り駅までは徒歩十分くらい。それなりに栄えている街の郊外だから、通りには同じく通勤目的と思われる人の流れがある。ホームだってそこそこ埋まっていて、電車内も満員というほどではないが座れる可能性は高くない。だいたい立つことになる。

 車両の奥の方に押し込まれたみつほはぼんやり車窓からの風景を眺めた。だらだら流れていく。これは無心で耐えるべき時間だ。本を読んだりスマートフォンのゲームをしたりしていた時期もあったが、どれも長続きしなかった。目的地まででくたびれて、虚しくなってしまうのだ。それではあとが続かない。

 三十分ほどでようやく車両から吐き出されて開放感を感じていたも昔の話。降りた先も結局人混みだから。今やとても疲れているか、ある程度疲れているか、の差しかない。
駅から少し歩けば、みつほが勤めている街なかの銀行、メガバンクの支店が現れる。名前を親戚や知り合いなんかに教えるとへぇ、という顔をしてくれる。そういう時の気持ち良さはまだ捨てられていない。同時に、何も知らないくせにと冷めたようにひねくれる自分も抱きながら。

 裏口から行内に入り、言った。
 「おはようございます」
 最初の挨拶だけはなるべく大きな声ですると決めている。そうしたら息と声と一緒に、それまで考えていたことも気持ちも出て行ってくれるような気がするから。
 「おはようございます、円さん」
 言いながら近づいてきたのはみつほの直属の後輩の畠山だった。
 彼は入行三年目で、入った時からずっとみつほが指導しながら一緒に法人営業を行っている。いかにも今時の男の子という感じで、もじゃっとした中途半端な髪型が内心いつも引っかかっている。

 「〇〇〇さん、そろそろ僕が担当してもいいっすか」
 いきなり不躾にそんなことを言ってきた。名を出したのは、最近業績が好調なメーカーさんだ。この間社長にお会いした時の様子がぱっと思い浮かぶ。活気に満ちた表情だった。みつほが新人時代最初に任された企業の内のひとつでもあって、辛い時も知っている身としては自分まで元気になるような気がしたものだ。
 それをあんたみたいな下っ端によこせと?大体、いいっすか、ってなんだ。
 
 「君じゃまだ無理」
 刺々しさに満ちた言葉は心の中に留め、デスクを整えながら顔も見ないで言ってやる。畠山はあっ、はぁ、みたいな不明瞭な返事をした。不満げな感じだが反論するでもなく、みつほの隣の自らの席に座ってしまう。
 「なんで急にそんなこと言い出したの?もっと経験積まないとダメに決まってるでしょ」
 必要もないのについつい問い詰めてしまう。この男のこういう歯切れが悪いところが気に入らないのだ。言いたいことがあるなら言え、といつも思ってしまって。

 「いえ、その、僕ももう円さんのご指導長く受けてますから、いいかなって」
 立ったまま見下ろした先の畠山は伏し目がちにもごもご答える。
 「根拠ないじゃん。だいたい最終的に決めるのは私じゃないんだから。私たちの上司だよ、ジョーシ。本気で頼むなら、推薦してくださいって言うべきでしょうが。そもそもいいっすかって何よいいっすかって」
 あっさり心の声が漏れる。畠山だからまあ良いだろうと思い直す。当の本人はまだうつむき、神妙そうな様子で聞いていた。とはいえいつまでも気にしている暇もなく、デスク上で鳴り響いた電話がみつほの耳を引っ張った。

 「円さん、△△△の□□□様からお電話です」
 離れた場所から外線担当の子が言っている。すぐ電話主の顔が思い浮かぶ。担当する顧客の一人で、縁起物のだるまみたいな丸っこい人だ。無理を要求してくるわけではないが、朝早くでも夜遅くでも気になることがすぐにかけてくる。面倒だなと思いつつも、頷いて受話器を取る。
 「お電話かわりました円です。はい、お世話になっております」
 そう言っている時にはもう畠山のことなんて忘れていた。



 電話の目的はある手続きに必要な書類が欲しい、というものだった。みつほの課が行う業務ではない。別に担当がいるし、調べればそちらの連絡先だってすぐわかるはずなのだけれど、慣れているからというだけで何でも頼まれる。小間使いのようだ。そういう仕事だということはもう身に染みている。

 書類をファクスしてやって話が済むと、ちょうど朝礼の時間だった。
 「では皆さん、集まってください」
 その声にみつほの胸がちょっと弾む。『彼』が立ち上がり、声をかけていた。
畠山など、同僚が集まってくる。みつほも近寄った。スーツが着崩れていないか確かめながら。
 「朝礼を始めます、おはようございます」
 『彼』が言い、皆が挨拶を返す。『彼』はにこりと微笑んで、言葉を続ける。いつものことだし、隣の課でも同様にしているのだけれど『彼』がするとまるでドラマの一場面のように思える。
 「今月の目標達成率ですが……」
 話を聞くのもそこそこに、みつほは不審がられない程度に『彼』を見ている。
 
 『彼』は営業部、みつほが所属する課の課長だ。一緒に働いて、今年で四年目になる。最初は他の支店から移ってきた単なる先輩だったのに、とんとん拍子に出世していまや上司になってしまった。シンプルに仕事ができるのだろう。素直に尊敬するし、素直に格好良い。
 身長は一八〇㎝はある。テニスが趣味ということで、体つきも良い。適度に日焼けしているのも爽やかだ。知り合ってからずっと見た目が変わっていないのではないだろうか。みつほより六歳も年上なのに。
 「以上です。今日も一日頑張りましょう」
 『彼』は身を翻す。他の同僚が戻っていく中、みつほは進み出た。

 「課長、今日の昼の会食ですが、課長はいらっしゃいますか?」
 『彼』に声をかける。上司だから職場ではもちろんこのような話し方しかしない。たとえ心の中でどう思っていて、どう呼んでいても。
 席につこうとしていた『彼』は動きを止め、みつほに目を向けた。

 「その件か。うーん、迷っていたけれど、外為からも一人伺うんだよね?」
 朝礼の時よりは砕けた調子で話してくれる。慣れた仲として扱ってくれているのだろう、とみつほは考えている。そう思っていた方が嬉しい。
 「そうです。なので、ウチからは私を入れて二人、向こうもお二人です」
 「ならやめておくよ。今回は打ち合わせだし、俺は最後の契約の時に出向く」
 「わかりました」
 「円くんなら安心して任せられるしね」
 最後にもうひとつ微笑んで『彼』は座り、パソコンに目を移した。その笑顔はとどめのようで、うっかり正面から見てしまったみつほは嬉しくなってしまうのを抑えられなかった。

 返答は実は予想していたものだった。何も言われなければすたすた出かけてしまったって良かったのだ。それをわざわざ確認した理由はもちろん他人には言えない。
 心なしか足が軽くなったように感じながら自分も席に戻ろうと振り向いたら、畠山と目が合った。色白の肌と中途半端な髪を見せつけられる。子供っぽい。どうかしたのかと眉をひそめそうになった時には、もう畠山の目線は外れていた。おかしなやつ。

 九時、営業開始を知らせるチャイムが鳴る。個人のお客さまが入ってくる。みつほは座りはせず、デスクに置いていたカバンをまた手に取った。
 「畠山くん、私もう出ようと思うけど」
 「あぁ、はい。午前中はいます」
 あぁ、はいって。なんだその返事は。これだから院卒の実家暮らしは――あまり良くない悪口が頭によぎる。
 「オッケ。よろしく」
 今度は我慢してそれだけ言い残し、入ってきた裏口からまた出て行った。横目で見れば、畠山はお行儀よく座りなおしてパソコンを叩いていて、『彼』は難しい顔で何ごとか部下に指示していた。



 外に出て、歩きながらスケジュールアプリをチェックする。今日は午前と午後にアポイントがひとつずつと、先ほど『彼』と話した昼食兼の会食が予定されていた。
 どれも資本金一億円以上の企業の管理職が相手で、会食の方に合流する行員もみつほより役職は上だ。こちらは二重に気が抜けない。せっかく良いお店に行けても、きっと食べた気がしないだろう。もったいないなと思いながら、急ぎ足でさっき出てきたばかりの駅へ戻っていく。

 みつほがこういう生活をするようになってもう六年になる。大学の商学部をストレートで出て、新卒で入行してからずっと。
 まあ悪くないと思う。不満が全く無いわけじゃないし、忙しい時や大変な時もあるけれど、やりがいはあるし、頑張った分評価もしてもらえていると感じる。さっき上司が、『彼』が言ってくれたように。それはお給料にも現れていて、入行当時は行員用の寮住まいだったけれど、今は職場に近いマンションに移ることができた。しかもお風呂とトイレが別!
 電車に乗り込むと、さっき見せられたのと同じ風景がまた流れていく。夜帰れるようになったらコンビニに寄って、何か甘いものを買おうと決めた。お金はあるのだから。



 「ホント楽しい毎日だわ」
 同期の女の子はそう言うと、グラスに入ったカクテルを一気に飲み干した。
 みつほはウーロンハイをちびちびやっている。消え去ったカクテルはそういう飲み方の似合わないオシャレな名称だったと思ったが、指摘はしなかった。

 あくる日、みつほは同じ支店に勤める同期と夕食兼の飲み会に来ていた。職場の近くの居酒屋。
 この同期は店頭で個人のお客さまを担当している。いわゆる窓口の人、だ。外を出歩くことも多いみつほとは全然違う仕事をしているし、職場での扱いも異なるけれど、みつほは仲良くしていた。仕事の内容や扱いが全然違うというのが助かった。その人の人間的な良し悪しだけ考えれば良いのだから。

 同じ課の同僚とは実はそんなに仲が良くない。多く話すのは直属の上司である『彼』と、話して指導せざるを得ない畠山くらい。仕事の割り当てとか、上からの評価とか、余計な雑音が耳に入ってしまって嫌なのだ。

 その点みつほはこの同期のことを尊敬していた。窓口の仕事はやりたくないし、そもそもできないとさえ思うからだ。一日に千差万別の、時には無茶なことを言う知りもしないお客さんを何人もにこやかに相手するなんてとても無理。
 「ね、みつほちゃん、ホント毎日楽しいよねぇ」
 「絶対そう思ってないでしょ」
 わざわざ繰り返すので、みつほは察して言ってやる。とたんに同期は机の上に突っ伏した。
 「はい嘘です全然楽しくなんかありません。毎日おじさんおばさんおじいさんおばあさんの相手ばっかりでうんざりです~!」
 相当酔っているようだ。だから一気飲みなんてしなければよかったのに。
 「うんうん分かるよ。私も毎日おじさんにいいように使われて大変だよ」
 慰めるつもりで背中をぽんぽん叩いても、もぞもぞするばかり。

 「ああわたしも出会いが欲しい。颯爽と現れたイケメンの一流企業社員にお仕事終わったらお時間ありますかとか言われたい。みつほちゃんじゃなくてイケメンにぽんぽんされたい~」
 「あはは、ひどいなあ。出会いなら私だってないよ」
 苦笑すると、同期はいきなりがばっと顔を上げた。あまりの勢いにみつほはちょっとのけぞりそうになった。
 「そっちはあるでしょ!」
 「え?どういうこと?」

 突然のことに理解が追いつかなかったみつほは何も考えずにそう問い返した。
 だからその後の、知りたくもなかった事実をまともに聞いてしまった。
 「みつほちゃんの上司、結婚するじゃん」




ーー続く(10月第一週公開予定)

2017年9月17日日曜日

私生活の好機はまだ

今週は仕事が忙しい時以外は原稿やってました。まだ他人と書いてひとに見せられる段階ではない……。怠けてると思われるんじゃないかという恐怖を常に抱いております(チキン)。

座り仕事の辛いところはこういうのですよね。仕事の方でも一日中パソコン叩いているので。家帰ってもノーパソが友達。指が痛い!

またそういう部分は鍛えられないから、筋トレして防ごうと思っても無理だと思ってます。肥大していくのは指の関節ばかり。農夫か。ホントの農家はお前なんかよりもっとムキムキだよ。謝れ。すみません。

まあそういう痛みもね、音楽聴きながら作業すれば紛らわせられるんですよ。最近のイチオシはこれ↓


PENGUIN RESEARCHは歌詞がストレート&メロディがキャッチーで良いですよね~。この曲は配信限定で、AWAで流れてきたので聴いてみたんですがかなり耳を引っ張られました。アニメ畑ボカロ畑で鍛えられてきただけのことはあります。

勢いでライブのチケットも買ってしまいました!10月13日(金)@池下CLUB UPSET!!

©vivid undress, PENGUIN RESEARCH/ヴィヴィアンのツイッターから転載させて頂きました。

前回も紹介したvivid undressとの対バンイベント「ビビったヤツはオシリペンペン!!?」です。ただ実は主目的はvivid undressだったり(笑)(今までの話は?)(クソ)

いやいや、まあそもそも「ヴィヴィアン良かったな、応援したいなー」→「あれ、PGRと仲良しなの!?」→「観たことないしちょうどいいや、買っちゃえ」だし。
対バンの方が色々楽しめていいじゃないすか!僕はワンマンのチケットばかり売り切れる風潮に異議を唱えていきますよ~。

2017年9月9日土曜日

永遠について語るとき、何を語るか?~テスラは泣かない。×鳴ル銅鑼×vivid undress ライブレポ~

もはや週一の体を示し始めた当ブログ。ま、まあ継続することが重要ですから(震え声)

今日は日々の日記と紹介を兼ねて、行ったライブのレポート!ライブに行くのもレポートも久々!!確認したら約3か月ぶりでした。(^^; )

今回参戦したのは、8日にあった鹿児島発マグマロックバンド『テスラは泣かない。』のニューアルバム『永遠について語るとき、私たちの語ること』Release Tourです。もちろん?名古屋。

ハロスリも好きなので大阪に行けたら嬉しい人生だった

会場は新栄のアポロベイス!ダイアモンドホールの系列店で、始めて行きましたが、適度な広さと良い音が好印象でした~。
さらにこの日はドリンク300円!ついついお酒をたくさん飲んでしまいましたが、トイレが綺麗だったのも◎です(笑)。


トップバッターはvivid undress!
初見&音源もほとんど知らない状況(YouTubeでほんの少し確認しただけ)で観ましたが、とても良かったです!!
何が良いって、メンバーの皆さんが全員、楽しそうに演っているんですよね。
僕は音楽に(そしてライブに)、なによりもまず楽しさを求めています。だから観ているこちらも楽しい気分になるような表情やそぶりを魅せてくれると嬉しくなりますし、また観たいと思えるのです~。
曲もどれも大変に格好良く、やっぱり自分は鍵盤×ギターが前面に出た音が好きなんだなぁとしみじみ思いました。


二番手は地元出身、鳴ル銅鑼!
こちらも初見&(ry…だったのですが(地元なのにね)、メロウでノれるライブを観せてくれました。
今回の3バンドの中では唯一鍵盤がないスタンダードな4ピースバンドだったのですが、だからこそ楽器の音がまっすぐ×心地よく耳に届きました。
6日に新譜を発売したばかりで、そこからの曲が多かったので初心者の僕にはハッピー(←サブスクリプションで聴けたのです)。過去の音源も探して手に入れたいなあと思わせられました。


そしてトリはもちろんテスラは泣かない。!
ライブは一度だけ、去年のサカエスプリングで観ていたのですが、その時よりさらに進化した踊れる&アガる↑↑サウンドでした!!

このブログでも以前紹介したリード曲「アテネ」で十二分に温まった会場をさらに噴火!(笑)そこから定番「Cry Cry Cry」、アルバムの新曲「ミスターサンライズ」とアッパーな曲でたたみかけてくれました。
このあとの「フール フール フール」、「名もなきアクション」はコール&レスポンスを呼び掛けてくれて、会場との一体感も最高潮!
ラストの「Like a swallow」→アンコールの「GLORY GLORY」の世界観は、来年で10周年を迎えるテスラが帰ってくる場所として彼らの心にしっかりと根付いていることを感じさせてくれましたね~。

ベースヨシムタさんの復帰祝いリリースということもあって、彼ら自身もやはりとても楽しそうに、そして嬉しそうに演っていたのが印象的でした。
Vo.村上さんは「永遠について語るとき私たちの語ることは『永遠はどこかにきっとあるからそっと胸にしまっておこう』ということ」という趣旨のことをおっしゃっていました。メンバーの一時離脱という苦境を乗り越えたからこそ出てきた言葉なんだろうなとしみじみ思います。

テスラのメンバーは年齢的にもお兄さん・お姉さんという感じで、応援していくだけでなく僕もこんな風に創作活動をしていきたいと思えるような姿を見せてくれました!僕は(そしてあなたは)、何を語れるんでしょう……。
追いかけて、頑張ります!!

会場の写真とかを撮り忘れたのでvivid undressのツイッターから転載させて頂きます…(__;)
打ち上げまで楽しそうですよね!



テスラのセトリは以下!
※曲順は誤りがあるかもしれません、ご了承ください。

アテネ
Cry Cry Cry
ミスターサンライズ
名もなきアクション
フール フール フール
アンダーソン
Lie to myself
サラバ
Like a swallow
アンコール:GLORY GLORY

2017年9月3日日曜日

"行き着くその場所はどこよりも美しい"

みなさん、辛い時や疲れた時はどうやってリフレッシュしますか?(・・ )

僕は物語を摂取します。様々な状況の中での人々の生きざまに没入することで、自分の現在の苦境を解決するヒントがつかめると思っています。それが高じていまや自分で書くようにまでなってしまいました(笑)。

媒体は問いません。アニメ、マンガ、ドラマなどなど。ただ多いのはこの2つ――小説音楽です。
前者は昔から存在する、ストレートにお話を伝えてくれる媒体でしょう。そして後者、音楽も、同じくらいもしくはもっと昔から存在した、ひとつのストーリーを伝える手段だと思います。
そしてさる8月30日、そんな音楽の世界から、またひとつ素晴らしい物語が届けられました!

la la larks1stフルアルバム『Culture Vulture』発売です!



以前のブログでも書きましたが収録曲全12曲、どれもメチャクチャ格好良いです。
全曲を通じて、僕がla la larksの魅力だと思う将来にある光・その過程にある苦難・それを越えて未来へ進む意志……といった人間の生き様が伝わってくる気がします。
結成当初から歌われている『self』はこのテーマをストレートに現わしている曲で、最後の曲として収録されている理由も分かるというもの。

このアルバムはそれに加えて“次のステージを感じさせる内容”(音楽情報サイト「リスレゾ」インタビューでのvo.内村さんの発言)を提示してくれています。
それを代表しているのがやはり、新曲の『Massive Passive』『Reset』でしょう。
『Massive(略)』に関しては以前のブログで書いたので今日は『Reset』について。

『Reset』は風が吹き抜けていくような、爽やかな雰囲気が印象的な曲です。
サウンドだけでなく歌詞にもそれが現れていて、
“縮こまる世界なら蹴飛ばして”“運命を決めつけた僕を捨てよう”など、前向きな言葉がちりばめられています。
そしてトドメ(?)のような、サビの“行き着くその場所はどこよりも美しい” “向かい風は今空っぽの手の中”というフレーズ!

これまで提示してきた苦難に耐える、立ち向かうという姿勢だけでなく。
それらさえも全部飲み込んでしまって、先にある灯りは必ず素晴らしいものだ、という確信を伝えているように感じます。

今作が伝えてくれた物語、それが描く生き様や価値。僕もそれを受け止めて新たな物語を世に放ちたいです。絶賛準備中。

まずはぜひぜひ、実際に音源を、そしてライブを聴いてみてください!
タワーレコード渋谷店で購入すれば9月18日のインストアライブにも参加できるそうですよ(^^ )
しかし公式のイベントまとめが弱いんですよね。つくろうかなぁ。

2017年8月24日木曜日

自分的冲方作品テーマソング その3-『メトセラとプラスチックと太陽の臓器』×『アテネ』

最近ゲリラ豪雨が多いですね。なんでも急なのは困りもの……。
良いことも悪いことも、ある程度定期的に起こるのが助かりますよね。

ということで(?)冲方サミットブログもうぶちんブログも動かないので(??)このブログを動かします!(強引)
内容は久々の冲方作品テーマソング紹介で~。

今日ご紹介する曲はコチラ↓


ロックバンド「テスラは泣かない。」の『アテネ』です!

軽快なイントロが良い!
そしてこれとマッチする冲方作品とは……?

『メトセラとプラスチックと太陽の臓器』!



当該作品は冲方さんの短編集『OUT OF CONTROL』に収録されています。
人工臓器によって新生児を300年以上の長命にすることができる技術が確立された世界で、その第一世代を生む両親の生活や葛藤を社会の描写も織り交ぜながら描くSF作品です。

自分よりずっと長い時間を生きる子供に何を残せるかと悩み、大変長持ちすることが知られたプラスチックに世界が覆われる夢を見る母親。

その横で「もの書き」として社会を分析しながらも妻に寄り添い子供に愛情を伝えようとする冲方さん風の語り手。

新技術の名称として様々なものが提案されては迷走する世の中を十分描きながらも、
両親の揺れ動く気持ちを伝える冲方さんの言葉遊び力&文章力が光る短編だと思います。

ここからは曲の話ですが、『アテネ』のテーマは「永遠」です。
儚い世界の中で永遠を求めてしまう人間の姿が曲中では歌われています。

これはまさに、『メトセラ(略)』のついつい長寿を望んでしまう世界/我が子に永遠の愛を感じてほしいと願ってしまう両親の気持ちではないでしょうか?

何をかいわんや、収録されているアルバムのタイトルも『永遠について語るとき、私たちの語ること』
永遠とも思える命について語った物語である『メトセラ』にぴったりです。

『アテネ』の中で特に『メトセラ』にフィットすると思うのは2番です……。以下、歌詞抜粋。

“うつろう刹那の下で 幾千万年の声を聴けよ”
“それはいつも目には見えないし 手を伸ばせば消えるんだ”
“I believe you forever 信じてみるよ 永遠を”

『アテネ』はただ聴いても気分の盛り上がる↑↑曲ですし、『メトセラ』もさらりと小気味が良い作品です。
ぜひお気軽にお手に取ってみてください(^^)v


2017年8月19日土曜日

夏コミ新刊「シュヴェーアト」通販開始しました!

「シュヴェーアトシュピーゲル」の通販を始めました!



本体価格は店頭販売時と変わりませんが、別途送料\310がかかります。
送付形式を変えましたので既刊の表示価格も以前とは異なっております。値下げとかしたわけではないんですが……

よろしければシュピーゲル本「二〇一七」/オリジナル「アリア」もよろしくお願い致します!





なかなか日常の話ができるようになりませんね。まだまだ夏コミの反省作業中で……。ああもっとボンヤリマンガの話とか音楽の話とかしたい~。でも読んでないし聴いてないチクショウ~~。

2017年8月15日火曜日

夏コミありがとうございました!&冬コミはシュピーゲル本!

もうタイトルだけで全てを表せている気がしますが、改めて……

夏コミありがとうございました!

あまりの疲労感から投稿に日が空いてしまってスミマセン(汗)

そもそも、同人活動始めて以来最長の作品/落選からの委託依頼/イラスト募集などフェストゥムばりのバリエーションで襲ってきた数々の障害を乗り越えるだけでもかなりきつかったなぁ、などとしみじみ回想する今日このごろ←自分のせい←吐血。

急なお願いにもかかわらず快く委託販売を引き受けてくださったサークル「ORACION★FACTORY」の神城さん、素晴らしいイラストを提供してくださったガラスさんに今一度感謝致します、本当にありがとうございましたm(_ _)m

そして僕たちは未来を見て前進し続けなくてはいけません。

本をご購入頂いた方は掲載している告知イラストでご承知でしょうが、

冬コミにも参加します!
次回もシュピーゲル本、主人公は蛭雪です!!



次回もイラストはガラスさんにお願いします!
また、大変ありがたいことにガラスさんは众のメンバーとして今後タッグを組んで活動してくださることになりました!
何度も言っていることですが「善きつながり」に感謝してもしきれません……。

内容・長さ等は後日告知していきますが、少しでもご期待頂ければ幸いです!(びっくりマークの濫用をやめたい)

2017年8月5日土曜日

「シュヴェーアトシュピーゲル」入稿完了! & 夏コミ頒布決定!

お疲れ様です!お久しぶりです!!
息をしていませんでしたが復活しました。ほとんどひと月振りですよ……。ふがいないやぁ(YUKI風)
こういうパターンの出だしはデジャヴですね?
そう、ずっと取り掛かっていたものが完成したのです!

シュピーゲル二次創作小説「シュヴェーアトシュピーゲル」入稿完了!
夏コミにて頒布決定しました!



剣〈シュヴェーアト〉の幸福。矢〈ファーレ〉の失墜。
「シュヴェーアトシュピーゲル-剣・シンケル・ユングの幸福と失墜-」
著:川口 けいた
絵:ガラス
A5判/116P/800円

頒布場所:夏コミ(C92)2日目(8月12日 土曜日)東3ホール コ-34a
サークル「ORACION★FACTORY」様内 委託販売

本編で涼月たちを苦しめた特甲猟兵・ユング兄弟――そのうち初出時既に亡くなっており
「テスタメント2」で亡霊のような形で”復活”した末弟=剣・シンケル・ユング。
レベル3の副作用たるフロー状態に真っ先に転落/二人の兄による虐待死。
壮絶な運命をたどった彼の人生は何だったのか?


原作での特甲猟兵の扱いカワイソすぎやろ!という憤慨から衝動だけで書き始めた本作ですが、何とか形にできました……。
描き切れなかった部分もありますが、彼らが原作であのような最後(ネタバレ防止)を迎えることになってしまった軌跡を少しでも身近に感じてもらいたいという一心で仕上げました。原作完結で喪失感をぬぐえない精鋭の皆様にぜひお手に取って頂ければ幸いです。

もともと夏コミに落選してしまっていた弊サークル「众」ですが、ご厚意でサークル「ORACION★FACTORY」様にて、委託販売させて頂けることになりました(涙)「ORACION★FACTORY」様は長くシュピーゲルシリーズの二次創作同人誌を発刊されていて、過去には冲方サミットで紹介されたことも!
去年の冬コミで隣り合わせだったご縁でダメ元でお願いしたところ、快くご了承頂き、感謝してもし尽くせません。本当にありがとうございます!

「ORACION★FACTORY」様でも、新刊「スプライトシュピーゲルif」を頒布されます!
原作の六年後、成長した乙と後輩の特甲児童チームが繰り広げる戦いを描くオリジナル小説です。
僕は一足先に読ませて頂きましたが、サムライウーマンとなった乙と後輩の特甲児童=天姫/比叡/春奈の掛け合いやバトルシーンはクランチ文体の再現度も相まって原作さながら!大変楽しく読ませて頂きました。

ブースで精鋭の皆様をお待ちしております(^^)

2017年7月12日水曜日

Like a larks who is learning to pray.

最近告知ばかりでロクなブログを書いていませんね……。原稿がキツくてこちらに力を注げていませんでした。

たまにはまともな記事を書かないと、と思って現在キーボードを叩いております。
(こういうフレーズも今や古そうですね、イマドキの人はスマホとかタブレットで書きそう。)
ということで今日は久々に、肩の力を抜いて紹介記事を書こうと思います。

la la larksの初☆フルアルバムが発表されましたね!!!

オアアァァッッwwツイに、ツイに出てしまうヨォッwwwマンマ、マンマ、キエエエエ!

はっ、しまった、興奮のあまりカトルカール化してしまった(゜゜;)

えーと、前々からこのブログでも紹介している僕のイチ押しロックバンド、la la larksが8月30日にフルアルバム「Culture Vulture」をリリースすることになったそうです!

新アー写。謎めいています

収録曲は人気スマホゲーム『Fate/Grand Order』のテーマソングで、坂本真綾さんにla la larksが提供した「色彩」(なんとこのアルバム限定で真綾さんがコーラス参加!)など、全12曲。

彼らは今までほとんどリリースをせずツイッターもやらず、ストイックにライブ中心の活動をしてきました。ゆえに今回の収録曲はライブではほとんど披露していて、僕はほぼチェック済みです。その経験から保証します。

どの曲もメチャクチャカッコイイです!

スピーディーなアップテンポの曲にも、大人っぽいメロウな曲にもどこか未来的な/将来に向けた光のようなものを感じせるのがla la larksの特徴だと思います。



上はアルバムのリード曲「Massive Passive」のミュージックビデオ、ショートバージョンです。音・動画・歌詞どれも――サビの“かりそめの価値を あるがまま強く抱いて 今生きてる”という言葉は特に=今のla la larksの見ている地平を正面から伝えてくれるような曲だと思います。

リリースツアーも告知され、チケット先行販売も実施中です!なんと先行で買った人にはメンバー直筆サインをプレゼントしてくれるそうです。

これまでの活動からも察せられるように、彼らはライブにとにかく重きをおいています。気になった方はぜひライブに足を運んでみてください!!公式サイトはこちら。

2017年7月10日月曜日

シュピーゲルイラスト募集企画 受付終了しました!

お疲れさまです!
普段こういう挨拶は書きませんが、自分が疲れているのでつい言ってしまいました(^^;)

昨日既にツイッタには投稿しましたが、
先日から告知していたシュピーゲルイラスト募集企画の受付を終了しました!



依頼する方は無事決まりました~。詳細は後日公開させて頂きます。
ご応募いただいた方々、どうもありがとうございました!今後またご縁があれば……

2017年7月3日月曜日

あなたの描く地平を見せてくれ

 最近暑いですねぇ。いよいよミリオポリス化かな?むしろ南極北極の氷が溶けて、世界統一ゲームの情勢に??ウーン、トランプさんとパリ協定のことを考えるとあながち冗談にできない。そんな風にシュピーゲルの世界が近づくのは嫌ですね (--)

 さて、これも(良い意味で)シュピーゲルの世界に近づくための試みです――昨日ツイッタには書きましたが、

(クリックで募集サイトへ)

 お仕事として依頼しますので、ギャラも払います。カラーイラスト、モノクロイラスト各1枚募集で、@15,000円を保証します!

 設定は基本的には僕の考えたものに沿って頂きますが、アイデア・提案はどんどん歓迎というスタンスでやります。作業期間は14日程度と少し短いですが、それを乗り越えて挑戦してくれる精鋭よ来たれ!!

募集画面です!


・・・・・

 企画の概要はこんな感じです。こういうことをし始めた意図も少し。

 繰り返し書いているつもりですが、僕は冲方作品が、なかでもシュピーゲルが大好きです。ありがちな言い方をしてしまえば、僕のバイブルです。シュピーゲルには挫折の中でそれでも進もう、というメッセージが詰まっていると思います。

 人生において大なり小なり挫折したことのない人はいないでしょう。もちろん僕もそうです。日々は挫折だらけ、身体は劣等感の臭いにまみれ、悔しさや不満がいつも胸のどこかに渦巻いている気がします――まだ足りない/もっと進むべきだ/その先に今よりずっと大きな幸福がある、という思いが拭えません。

 そんなに快適な毎日ではないです。いつかきっと、本当にこれ以上ないくらいの幸福な地平にたどり着いたら、辛い日々だったと思い返すようなものだと感じています。それでも、少なくとも足を止めずに進み続けている限り――僕はこの日々を/世界を/自分を、好きだと感じられると思っています。

 今のこの境地を/進む力を与えてくれたシュピーゲルを広めることで恩返しがしたい。
そして自分自身でも、シュピーゲルに並び立つような、シュピーゲルが見せてくれたような地平へ導ける物語を書きたい。そういう思いで僕は同人活動を始めました。

 創作活動をしている人は誰しもこんな思いを持っているのではないでしょうか。

 イラストという更なる手助けがあれば、僕がみなさんを連れて行きたい場所だけでなく、絵を描いてくださる方が行きたい場所にも、同時にたどり着くことができるでしょう。
 まだ見ぬ場所に降り立つ――それは誰にとってもたぐいまれなる価値を持つ経験だと思います。

 そのためにはまず絵を描いてくれるあなたに、僕があなたのイラストに価値を見出していることを知ってほしい。どれだけ身を切って、どういうものをあなたのイラストを求めているか分かってほしい。お金を払って募集しているのはそういう意図があります。

 あなたがその顔を向けている地平を、僕にも見せてほしい――そして一緒にもっとたくさんの人に、その景色を見てもらいませんか?


 募集期限は今週末までです。ご応募お待ちしております!!!

2017年7月2日日曜日

世界は大丈夫だ。

平常運転に戻すと言っておきながら一週間も空いてしまいました。ハズカシイ……。

そんなことしてる間に、ついにこの日がきてしまいましたよ。

シュピーゲル最終巻発売ですよ。



シュピーゲル最終巻発売ですよ!(くどい)

長かった/とうとう終わっ(てしまっ)た――第一声はこの言葉に尽きました。もうね、中身関係ないんですけど。とにかく出たということが重要なんです。10年追っかけてましたからね、10年。当時のうぶちんはまだまだ知名度低かったのに、今じゃ押しも押されぬ人気作家。僕なんぞのメールに返事してくれてたような人が本屋大賞受賞の直木賞ノミネートですから。

感慨がとにかくすごくて……。勢い余ってSSを書いてしまいました。(クリックで作品へ)

このSSはもう、良い気持ちしか書いてないです。正直に言って、読了直後は胸が良い気持ちでいっぱいでした。

もちろん細かいことで、ちょっと残念だな~っていう点もあるんですよ?

特甲猟兵が白露以外救われる描写もなく全滅しちゃって、誰か一人くらい生き残ったり、過去の描写があったらな、とか。
他はみんなカップル成立なのに吹雪だけ目を覚まさないとか悲しすぎィ!とか。
カール・クラウスとハンス・W・クラインの描写アッサリしすぎちゃう?とか。
日本人移民の設定とか冬真が死ぬことを“消えた”と思っちゃう設定は掘り下げないの?とか。
オイレン・スプライト各4巻のFBIとCIAはあれきり!?とか。

ま、そのへんは全部自分の二次創作で書けってことですね!
うぶちん、題材をくれてありがとう!!(マジキチスマイル)

とりあえず『シュヴェーアト』がうまくいったら、特甲猟兵の過去話をシリーズ化したい……。するぞ!

2017年6月24日土曜日

久々に ブログを書いて ことばヘン

 今日は一日『シュヴェーアト』の続きを書いていました。もう暑くてかなわんですね。夏でございます。

 僕の家はマンションなので、熱がこもってキツいんです。冬は暖かいんですが。あと家の近くに田んぼがあるので、この時期はカエルの鳴き声がうるさい!まるで催眠音波!!

 しかし、こう酷暑になると、どんどんオイレン/スプライト4巻みたいな世界に現実が近づいているような気がしますね?

 執筆の関係でダルフールの平均気温を調べていましたが、スーダンの1月は平均最高気温が36℃らしいです。(英語版wiki「エルファシル」の項より)その数字見ても、あんまり驚きませんでしたもんね。ふーんスーダンでも40℃いかないのか~みたいな。セイセイ冬だぞ、みたいな。猛暑に慣れてしまっている。

 アメリカがパリ協定を離脱してしまったらこの傾向も加速されるのでしょうか。ネットで見たのですが離脱宣言後、ドイツのメルケル首相が「欧州人はもう他国の首脳を信じられなくなった」的なことを演説したそうです。

 一国の・しかもドイツの首相にそこまで言わせる大統領のヤバさたるや。トランプさん/アメリカ国民がこの決断を後日後悔するようなことがなければいいんですけど。

 僕個人は近年の保護主義的/各国主義的な傾向はシュピーゲルで言うところの『自分の国とはいったいなんであるかを問うための新たなナショナリズム』の時期なのだと思っています。(スプライト2巻より)そういう意味では、シュピーゲルはある側面で現実を予期していたのではないでしょうか。

 イギリスがEU離脱に動いてしまったり、フランスが国内に軍を展開してしまったり、作品を裏切る悲しいことも現実になってしまいましたけれど、作品が見せてくれた良い未来を信じて生きていきたいです。

2017年6月22日木曜日

“お前は正しく夢を見ることができるか?”


――《413729231713117》――

 バシーンッ!はっ!!

 お久しぶりです!夏コミに落ちたショックでフロー状態になっていました……。ツイートもできない孤独な戦いの末、何とか時間面を進めることができましたしみじみ。
 
 ということで、告知をします!!!


「シュヴェーアトシュピーゲル」第壱章公開しました!(クリックで作品へ)



剣〈シュヴェーアト〉の幸福/矢〈ファーレ〉の失墜

本編で涼月たちを苦しめた特甲猟兵・ユング兄弟――そのうち、初出時既に亡くなっており「テスタメント2」で亡霊のような形で”復活”した末弟=剣・シンケル・ユング。
 レベル3の副作用たるフロー状態に真っ先に陥り/二人の兄にいじめ殺されるという壮絶な運命をたどった彼の人生とは何だったのか?

 第二章以降は夏コミ近辺で公開/頒布の予定!夏コミ落ちたけど!!頒布方法のめど全然たってないけど!!乞うご期待!!!


既刊絶賛販売中です!(クリックで販売ページへ)


 サークル「众」名義で発刊した既刊二作品、同人誌通販サイト「BOOTH」にて絶賛発売中です!それぞれ表示価格とは別に、送料310円がかかります。

・シュピーゲルシリーズ同人イラスト+小説本「二〇一七年、ミリオポリスで。」
(B5/本編16P)\500-

 初☆同人!


B5モノクロイラスト2枚・本編でも挿絵が無い、不遇な御影(笑)が主人公の短編小説「エアヴァクセシュピーゲル」を収録しています!

・オリジナル短編小説「アリアを憎んでいる」(B5/カラー表紙/本編36P)
\700-
 
 初☆オリジナル小説!

 
男子高校生、永屋覚徒(かくと)には憎むべき相手がいる――その名は『アリア』。
覚徒は激しいその感情を自分でも扱いかねていた。ひとに揺さぶられた心を、ひとに向けるための物語。

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 久々にブログを書いたからびっくりマーク(←エクスクラメーションと言え)を濫用してしまいました。!< やめろ…俺を濫用するな……

 今日からは平常運転に戻ります。ブログも定期更新を再開しますし、何も言わずに始めたSS=”loop”の続きもやりたいのです。あっ、サミットも行きますよ!くう~前進前進~~。しゅっしゅっしゅっしゅっ――ぼーっ!!(エンデミオン号風に)

2017年6月5日月曜日

孤独のグルメ(一人暮らし的な意味で)

最近食事をモリモリ食べています。たまたまスーパーに行ったときに、たまたま食材が安いことが多かったので。朝から晩まできっちり三品ずつ。健康的!

とはいえ、男の一人暮らしなので凝った調理はしませんが。大体肉と野菜を炒めて塩コショウをかけるだけ。肉⇔卵だったり塩⇔しょうゆ⇔ケチャップに置換可能です。ホントは焼き肉のたれが欲しいんですけどね。絶対余らせて捨てるハメになるからモッタイナイ!

定番は↑の主菜にインスタント味噌汁とサトウのご飯的なレトルト米をつけます。そこは手を抜くのかって?いやいや、これぐらいじゃないと続けられないから。栄養価的にも味的にもOKOK!

以前は主菜も冷凍食品だったり、米も味噌汁もなくてカップラーメンだったりしたんですけど、やはり味気ないんですよね。無理やり濃く味付けされたものを食べている感がすごい。口を通って行った感じはするけど、食べた!という感じがしない。

自分で素材を買って作ると、この点が違うんですよね。生きながらえている、という実感があります。食事によって。食べ物が何からできているのか、ひいては自分が何からできているのか、思いをはせられるのです。

そしてつけあわせは必ずこれ


なんでも多少なりとも自分の手でやる、というのは生活に必要な視点だと思います。例えば:移動は電車やタクシー、食事は外食、余暇は飲み会という調子だったら?楽だし楽しいでしょう。漢字が続いたな。気づいたら楽しいまま時間が過ぎていきます。お金はかかるけど、イージーな道です。

けれど、それをずっと続けていたら、流されている、という思いが生まれてくるのではないかと僕は思います。川底に足がつけられずに、ただぷかぷか渓流を下っていくような……。爽やかで気持ちいいけれど、どこか不安になってしまう。

まあ大抵の物事は自分の意思ではどうにもならないでしょう。それでも、たまに流れてくる木や、流れの途中にある岩に捕まってみるのも悪くない、ということです。

2017年5月31日水曜日

対重力的眩暈熱中症

ここ二回の投稿は久々にショートストーリーを連投しました!唐突ですねタハ。一応意図があってやっていることです。まだ言えないだけで←思わせぶり。

今回の話はある作品の二次創作です。僕の好きなものではありますが、冲方さん関連ではありません。「アリア」くらいの短編を目指しています。二十代女性のほろ苦く切ないラブストーリーにしたかった。既に過去形!はもう少し待ってくださいね。


さて、ということで今日は平常運転……。紹介シリーズを書こうと思います。最近やっているのはこれ↓


『GRAVITY DAZE 2』です。

 僕にとってかなり久々のゲーム体験です。このタイミングでPS4を買っているあたりからお察し。一応これをやるためにわざわざ買いました。

 でも実は、これがやりたいと思ったきっかけは全然覚えていないんですよね。なにかのPVを見て、面白そうだと感じたからだと思うんですけど。

ま、きっかけなんて今となってはどうでもいいんですよ。大事なことはただ一つ。

キトゥンかわいい!

キトゥンというのは画像にも描いてある主人公の女の子です。いやね、ゲームの良い点って紹介が難しいと思うんですよ。画像がきれいとか、操作感が楽しいとか、ストーリーに謎がちりばめられているとか。言葉であんまり言い立ててもどんどん離れていってしまいます。だから諦めました!(クソ)

何も言わずにキトゥンちゃんを見てください!!くりっとした目/すらりとした脚線美/幼さと大人の間で揺れるプロポーション=∞。

もう少し真面目に言うと、ゲーム内世界のアートディレクションもとても良いです。「重力」や「飛行」をテーマに、エキゾチックにまとめた風景は眺めているだけでもとても楽しい!その中を浮遊する感覚は今までにないものでしょう。ゲームPVはコチラ。

2017年5月25日木曜日

お口にチャック!

思ったことをすぐ口に出してしまいます。いい加減大人なのでだいぶコントロールできるようになってきましたが、何かに没入したりしてしまうともうだめです。

いちばん多いパターンは“実況”です。「あーめんどくさいなー」とか「ちくしょーこいつやってくれるな」とか。取り組んでいる物事の様子を説明してしまうんです。誰にだ。

次に多いパターンは“回想”です。「××すればよかったなあ」とか「こうしてくれればよかったのに!」みたいな。これはあまり言うのが危険なヤツです。うっかり相手に対する不満とかを述べてしまった日には、一巻の終わり・・・・・・。

言葉とは不便なものです。他人に向けて言ったつもりのものでなくても、うっかりおかしなことを言ってしまって、それが聞きとがめられたら大問題になることも。逆に、他人に向かって話しているつもりでも、全然相手に伝わらない――受け入れてもらえないこともあるでしょう。

 伝わらない虚しさと、伝わった(ような気がした)時の気持ち良さと、そのはざまで揺れています。ポエムでした。←ツイッタでやれ。

言葉が伝わっていない人の図。めだかボックスはおもしろかったなあ(小並)

2017年5月23日火曜日

微笑んだり涙を流す様な月並みな幸せ

 良い知らせがあったのでシュピーゲルの話が続きましたが、他のことも楽しんでいます!少し遅れましたが、先週の土曜に行ってきた分島花音さんのライブのレポートをしようと思います(^^)
 
 今回のライブはツアー”Blue Beast Biology ”のうちの一公演、名古屋SPADE BOXでのものでした。このツアー、最初の東京での公演はSOLD OUTになってしまったんですよね。それを見て、慌ててえらく早くにチケットを買ってしまいました。

 蓋を開けてみれば名古屋では当日券も出てしまいました。やはり東京以外だとそこまでではないんでしょうか。別に決してガラガラだったわけではないですよ!今回の会場だったSPADE BOXはキャパ400人ですが、8割ほどは埋まっていました。

 新しいし、駅からすごく近くて会場としては悪くなかったですね~。ただ、一番大事な音とステージが少し……。構造?のせいか設定?のせいか分かりませんが、楽器の音に広がりがないように感じました。ステージも客席から高くなっているうえに少し横に狭くて、位置によってはちょっと見づらい。

 名古屋の同じくらいのキャパだったら、エレクトリックレディランドがオススメです。ウケないと分かっている地元ネタ~。早く本題のライブ内容について書くべきですね!

 第一に、分島さんの魅力は歌唱力とトータルのセンスだなあと実感しました。歌手に必須の伸びやかな声と扇動力!一年ほど前にも東京のクラブクアトロでも観ているのですが、その時よりずっと良いと思いました。あの後ライブを何度もしたり、たくさんの曲を書く中で研鑽されたんでしょうか。声に張りがあり、またご本人がとても楽しんで、周りを巻き込もうとしているように感じました。

 また、分島さんは自分の世界をつくるのが上手いです。イラスト/衣装デザイン/そして曲――すべてが「私はこういう人間なの!」と訴えているようです。ある意味で“くせ”のある、でもそれがやみつきになるたぐいの“くせ”なんです。

 ま、こちゃこちゃと書きましたが、僕は一番好きな曲の「ツキナミ」と二番目に好きな「ノットフォーセール・フォッシル」が聴けたので満足です。他はもうなんでもオッケー!(じゃあなぜ書いた)いや、他にも良い点はたくさんありましたよ。バンドメンバーも息が合っていて、ドラムの池田さんの即興演奏なんてとても楽しかったし。あー書ききれない。

 とりあえずアルバムの「ツキナミ」と「luminescence Q.E.D.」を聴いてライブに行きましょう!そしたらみんなハッピー!!

物販でのCD購入者限定のポスター。カッコイイ!


2017年5月21日日曜日

”よう―あたくし様”


テスタメント3脱稿完了のお知らせがありましたね!

 このまま続報もなく出ないで、また5年くらい待たされるんじゃないかとさえ思っていました。なので、出ることが決まっただけでとても嬉しいです。

 僕がシュピーゲルを知ったのは、単行本3巻発売くらいの頃でした。白亜右月さんのシャープな絵柄に惹かれて手を伸ばして、クランチ文体のSFらしい未来的な感じにやられてしまったんですよね。イラスト買いかよ!言わない言わない。

 その辺の経緯はこの残念動画にまとめられています……。

【ニコニコ動画】【冲方1分動画】10年前の読みたい子どもたち【シュピーゲル紹介】

 締切最終日に勢いで作ってアップした動画なのでこの低クオリティなのです(-ω-;) もう気持ちだけですよ、気持ちだけ。最初の衝動を伝えたかったんです。夢というのは最初の衝動を持続させられた者だけが実現できます。(©二十世紀少年)若かった←たかが一年半前だろ!

 とはいえ、すっかり読み込んだ今では、シュピーゲルの魅力は苦境の中で自ら選択をする登場人物達の生きざまと格好良さだと思っています。

 冲方さんは災害/逮捕/大病といった様々な苦境の中でもめげず、真っ直ぐに進み続けて最終巻まで書き上げるという選択をしてくださいました。このこと自体も、シュピーゲルが・冲方さんが伝えたいメッセージなのではないかとさえ思います。

 冲方さんに賞賛と感謝をしつつ、自分がそれにどのような形で恩返しできるのか、今から考えながら発売日を待ちます。

2017年5月20日土曜日

シュピーゲル二次創作作品感想その2:神城蒼馬さん「ヴィントシュピーゲル弐 ウサギとカメのロンド」

 5月も後半に入ってしまいましたね。今月はどういう月ですか?僕にとっては忙しい月です。労働的な意味で。悲しい。

 あまりの忙しさに五月病になる暇もありませんでした。通り越してフロー状態です。ずっと今月が終わらずに続いて、時間面がこのまま止まってしまいそうな雰囲気。おっ、聞き慣れたワードが出てきたぞ?これはシュピーゲルの話題ですか??いいえケフィアです(古い)そうです、恒例にしたいと思っているシュピーゲル二次創作感想シリーズ!

 今日は神城蒼馬さん(ツイッタ:@sohma_k)の「ヴィントシュピーゲル弐 ウサギとカメのロンド」を拝読しました。(クリックで作品へ)



 え、なぜ弐からなんだ、って?うーん、ほら、弐からでも読めるって言われたからさ、ね??
・・・・・・すみません、去年の冬コミで隣のブースになったご縁で頂いたのを放置していただけですゥッ!(土下座)(頭をめり込ませつつ)

 途中までは読んでいたんですよ。ちゃんと感想ツイートもしましたし。でもその頃から名古屋ティアの準備が始まってしまって、ちょっと気持ちが・・・・・・。申し訳なさで恐縮しきりです。今の僕の気分といったら関さんに授時暦の誤りを指摘された時の春海にも劣りませんよ。もう湯呑投げつけられても何も言いません。無理がある?

 うーん、挽回の為に内容について触れます。一言で言って、大変良い二次創作でした!!

 神城さんはシュピーゲル二次創作界隈の重鎮(推測)で、シュピーゲルまとめwiki(クリックでサイトへ)をお作りになったり、色々な企画をされています。特にこの「ヴィント」の一巻は冲方サミットでも取り上げられたほどです!

 やはりそれだけ熱心に作品を読み込んでらっしゃるだけあって、原作の大小様々なエピソードをうまく膨らませています。この「ヴィント弐」の主人公のオリジナル特甲児童:鳴の正体が実はあの巻の×××だったなんて!

 敵も×××だとは思わなかったな。確かに言われてみれば、さらっと出てきてこの後どうなったんだ?みたいなキャラ、結構いますもんね。×××のところに何が入るかは実際に作品を読んで確かめましょう。クランチ文体の再現度も高く、原作を読んでいるような気分になれて、とても読みやすいですよ。

 なかなかそれらしく真似できないので、僕はクランチ文体を使うのは避けてきたんですが、こんな読後感を出せるならまたトライしてみようかと思い直しましたほどです。ガンバルゾ~。

 ぜひ読んでさしあげてくださいね!!

2017年5月16日火曜日

Straight Forward ( or not ?)

 最近自分の言うことにあまりにも一貫性がないかな?とか思っています。昨日la la larksの話をしたと思ったら今日はシュピーゲルの話、次の日はマンガの紹介、という調子ですから。古墳の話をしたこともありましたね。イミフメイ……。

 一応自分の中ではつながっているんです!ツイッターでもブログでも、自分が「おもしろい」と思ったことを書こうと決めています。

 「面白い」でも「オモシロイ」でもなく「おもしろい」なのが重要です。前者では海場社長あたりが「ふぅん」という言葉をマクラにしつつ言う感じですし、後者では森見登美彦風味が出てきてしまうと感じるからです。狸の親分が出てくるかもしれません。有頂天家族!

 おもしろいことは世の中にたくさん、それこそいくらでもあると思っています。ただ、多すぎるのも時には問題。せっかく見つけても忘れてしまうんですよね。最近特に物忘れが激しくなりました。道や名前がなかなか出てこなかったり、やすやすとダブルブッキングしてしまったり。年をとったか、くぅ~。

 だからこのブログやツイッタ、そして小説は、そういったおもしろいことを書きとめるためにやっている部分もあります。言葉で書き残しておけば忘れないし、埋もれてしまうおもしろいことを人に伝えることもできます。

 はかない、美しいもの、価値のあるものを少しでも留めようという努力が、絵や/音楽や/言葉を生んだのではないでしょうか。

2017年5月14日日曜日

シュピーゲル二次創作作品感想その1:ラピツティアさん『"Tanzen statt Worte"』

 
 今日の愛知は暑かったです・・・・・・。昨日は風雨が強くてまるで台風が来たみたいだったし、もう夏が近づいてきている感じがしますね。

 夏といえば?そう、夏コミ~!(強引)

 他の作品の宣伝や感想の投稿が多くなっていますが、ちゃんと夏コミに向けた準備も始めています。今は資料をチェック中。もう必要なものは集めて、内容を精査しております。

 その一環で、他の方々が書かれたシュピーゲルの同人作品を読み直しています。どういうジャンルにニーズがあるのか知りたいなと思いまして。去年の冬コミ以来自分のことで手いっぱいで、拝見できていなかったですし……。申し訳ナス……。

 今日読んだのはラピツティアさん(ツイッタ:@rabbitia)の『"Tanzen statt Worte"』!(クリックで作品ページへ行けます。)

 オーストリアで実際に開催されている「軍人舞踏会」に参加した特甲猟兵ズ=白露/陸王&秋水&剣兄弟の様子と、彼らが抱く思いを描いた作品です。
 
 ラピツティアさんは既に5年以上シュピーゲルの二次創作小説を投稿されていて、数も20作を越えていらっしゃる実績のある方です。継続は偉大!

 今作は読後感がとても爽やかでした。兄弟合体(なんだそれ)してしまった後の陸王も出てきて、そんなに明るい話ではないはずなのですが。かつて正気だった頃の白露の内面や、夕霧との楽しい交流の一幕が明るい印象を持たせてくれたのだと思います。

 タイトルは和訳すると「言葉の代わりのダンス」でしょうか。内容を直球で示した良いタイトルだと思いました。

 全然数えたわけではないですが、特甲猟兵ズがまだ希望にあふれていた頃を書いた二次創作作品が多いような気がしますね?(自信が無い)夏コミで出す自作『シュヴェーアトシュピーゲル』は剣を主人公にする予定なので、被らないように気を付けないと……。

 とはいえ、まずは特甲児童達を魅力的に描くのが必須条件!頑張りますv(- -)v

2017年5月12日金曜日

地面も言葉も疑いながら

 地に足をつけろ、という言葉があります。『考え方や行動が堅実・着実で、裏付けがしっかりしているさま』とのことです。©広辞苑。現実を見ろ、とか夢見がちになるな、あたりが類義語だと思います。こう思うことも不思議といえば不思議ですよね。地面に立っていれば現実的でしょうか?座ったり、寝転がったりしていた方が安定するし、身体も疲れないです。ちょっとくたびれてバランスを崩したりしたら、もう足なんて信用できません。


 夢見がちになるな、というのも気になります。大変リアルな夢だってあるでしょう。僕は今朝、大好きな歌手で既に解散してしまったGARNET CROWが復活ライブを行う!というニュースを聞かされる夢を見て、狂喜した瞬間に目が覚めました。起きてもしばらくそれが夢だと信じられなかったくらいです。物凄くリアルで、本当にニュースサイトの映像を見ているかのようでした。レイアウトなんていかにもそれらしくて、新しい舞台用の衣装を着たメンバーが映っていて……。『現』に『事実』としてあることが現実といいます。あの瞬間、確かにこの夢は僕にとっての事実でした。確かに裏付けこそないですが、夢見がちになっても考え方や行動が無軌道になったりはしないのでは?


 同人活動を始めて、ブログを書くようになって、こういう言葉の細かい意味が気になるようになりました。ちょこちょこと記事にもしているので、気づかれているかもしれません。語弊があって、自分の意図が伝えられないようでは困ってしまいますから。正しくて分かりやすい言葉を使いたいものです。安直な考えですけれど。


 一方で、どんなに様々な多くの言葉を費やしても伝えられないものもあるだろう、という思いもぬぐえません。それが本当かどうか確かめるために文章を連ねたいものです。

2017年5月10日水曜日

「アリア」通販を始めました!



 「アリアを憎んでいる」通販を始めました!




 少し発行から間が空いてしまいました……。通販は色々設定しないといけないことが多くて面倒ですが、売り方の勉強だと思って頑張っています。

 送料を含んでいるので、イベント販売価格より価格を上げさせていただいております。ご了承ください。

 こちらは夏コミにも(当選すれば)持っていく予定です。安く購入したい人は現地で買おう!

 

2017年5月8日月曜日

Kids-MGMTがテーマ曲

 子供があまり好きではありません。いきなり暗い!これは身体的な意味(幼児体型、など)でも、精神的な意味でも(子供っぽい、とか)あります。一言で言ってしまうと、人間に見えないからです。

 前者の観点からだと、子供の身体というのは少々アンバランスだと思います。お腹なんかぽこんと飛び出ているし、3,4歳だと、4頭身くらいですよね。身体に対して頭が大きすぎます。ちょっと力を入れられたらいきなりぽきりと折れてしまいそうで、どきどきしてしまうのです。脳が成長し過ぎた副作用ではないかと勘ぐってしまいます。

 子供のこころもよく分かりません。どう動きたがるか予測がつかない。いきなり走り出してどこかにいってしまうことなんて日常茶飯事でしょう。言うことも遠慮や歯止めというものを知りません。さっきまで何かについて騒いでいたと思ったら、もう興味を失って他のことをしている。人間というより、野生の動物のような気がしてしまいます。世のお父さんお母さんには頭が下がります。

 色々考えると、子供が自分を型に押し込めて、形をどうにかこうにか整えたものが大人、人間と思えるものなのかもしれません。社会で暮らすため、他人と一緒に過ごすため、自分を押し固めて我慢して過ごす。そうすることでようやく人間として認めてもらえる。その間に消して、目をそらしてきた衝動や気持ちの残骸の上に立って。そうやって選び取ってきたものと、踏みつけてしまったもの、どちらが本当の自分でしょうか……。なんてね。

 そうは言っても、身体が大きくなったらもう子供として扱ってくれないのが昔の普通だったはずです。ある年になったら、刺青を入れたり、割礼をしたりして、その瞬間からもう大人、なんてのは今でも続けられている風習だそうですし。痛みに耐えられないような弱いものは共同体で生きる資格がない。どうしたら大人か、人間か、なんてのは余裕のある時代の感傷ですね。


家の近所の古墳。昔の子供はどうしつけられたのか、とか気になりませんか?


2017年5月7日日曜日

”狼は死んだ。もういない。――そういうことに、なっている。”

 こんばんは。一昨日投稿した『アートレイル』の紹介記事が今まで一番ビュー数が多かったのでちょっと複雑な気分の川口です。やはり谷口さんのネームバリューか……。いえ、しかしこれによって『アートレイル』、谷口さん、ひいては樋口彰彦さんの名前がもっと売れれば何より!ということで、今日も樋口さんの別の作品を紹介することにしました。


『ルー=ガルー 忌避すべき狼』
原作:京極夏彦/作画:樋口彰彦


 前回の記事でも少し触れた、京極夏彦さんの小説のコミカライズです。京極さんといえば大御所大人気大作家として言わずもがな。(大が多い)特に妖怪や人の心の闇を扱った作品に定評がありますが、今作は数少ないSFものです。

 舞台は近未来の日本。パンデミックにより天文学的多数の死者を出した世界の人々は強烈な監視社会のもと、物理的接触を避け、モニタと『端末』を通して他者と交流していました。その中で生きる主人公の牧野葉月は、数少ないリアルの知人の一人を殺人事件により失います。それをきっかけに葉月は事件の真相へ、そして人と向き合うことに踏み出すのです……。

 書いていて気づきましたが、このスジって『ハーモニー』に似ていますね……。こちらの方が先なのでパクリではありませんよ!『ハーモニー』は個人をリソースとして過剰に保護する社会に対する息苦しさ、さらにはそもそも人間の価値とは何か、ということがテーマだったと思います。『ルー=ガルー』は葉月が生きるということ、ひいては人と接するということを受け入れる、個人の成長物語です。

葉月に接したいと思わせる周りの仲間たちも華で、神秘的なボク女:歩未、天才発明少女:美緒、チャイニーズツンデレ:麗猫……。ちょっとミーハーな書き方をしてしまいましたが、樋口さんのこの女の子たちの描き方がとても可愛い。現在ネットで見られる画像だと伝わり辛いのですが、原作中での微妙な表情の揺れが胸を掴むんです!


(左下から美緒、麗猫、葉月、歩未。上の二人は原作で!笑)

とても可愛い。

大事なことなので二度言いました。京極さんの原作の冷たさと、樋口さんの絵の暖かさが同居するこの稀有な作品を読まないのはとてももったいないです!どうか目を離さないでください。

2017年5月4日木曜日

『設定』と『かわいい』では弱い?


今日は久々にマンガの紹介をします!こちらです。



原作:谷口悟朗/作画:樋口彰彦 
『アートレイル-ニセカヰ的日常と殲滅エレメント-』

自分で定めた予定、『日常』にこだわりをもつ高校生、四十万伊織はある日唐突に謎の存在、『アートレイル』(表紙の黒い四角いもの)と遭遇します。
そして同時に、アートレイルが地球の半分を消し飛ばしたこと、自分がアートレイルと『対話』するために生み出された人工的な存在であったことを知らされます。
それだけでなく、これまでの生活はその能力を測るためかりそめに『設定』されたものであったと知るのです……。

 発売当初は『無限のリヴァイアス』や『コードギアス』で有名なアニメ監督、谷口悟朗さんの初のマンガ原作!という触れ込みで大々的に登場したマンガです。声優さんに声をあててもらうイベントなどやって、大きく宣伝していました。谷口さんらしく、大味なSF設定と、目を引くキャラクターがこの作品の第一の魅力でしょう。

 作画の樋口彰彦さんも京極夏彦さん『ルー=ガルー』のコミカライズなどで実績のあるマンガ家さんで、とてもかわいい(迫真)絵を描かれています。昔はアクション描写に少し物足りなさがあったのですが、この『アートレイル』では迫力を増しており、かわいさ(重要)と恰好良さが同居して魅力となっています。

しかしこの作品……、宣伝のわりに売れなかったのか、2巻以降の単行本が未発売&発売自体未定なのです!
もう4巻分溜まっているらしいのに(; ;)(樋口さんツイッターより)

確かに、一見しただけだとどこが面白いポイントなのか分かりにくい点があると思うので、読者がついてこれなかったのかもしれません。
しかし!『設定』された自分の境遇に抗う伊織の生きざまと、樋口さんによって描かれる伊織を支える仲間の面々の可愛さ(大事なことなので二度)&凛々しさは心に残るものがあります。



2話より。webでも読める話なので転載します。伊織が母(設定)だったこずえにつめよるシーンなのですが、このお母さんの表情かわいすぎではないですか?(小並感)


ぜひ皆さん読んでみてください。そして単行本続刊刊行の声を出版社に伝えてあげて頂ければ幸いです(_ _)