2017年5月7日日曜日

”狼は死んだ。もういない。――そういうことに、なっている。”

 こんばんは。一昨日投稿した『アートレイル』の紹介記事が今まで一番ビュー数が多かったのでちょっと複雑な気分の川口です。やはり谷口さんのネームバリューか……。いえ、しかしこれによって『アートレイル』、谷口さん、ひいては樋口彰彦さんの名前がもっと売れれば何より!ということで、今日も樋口さんの別の作品を紹介することにしました。


『ルー=ガルー 忌避すべき狼』
原作:京極夏彦/作画:樋口彰彦


 前回の記事でも少し触れた、京極夏彦さんの小説のコミカライズです。京極さんといえば大御所大人気大作家として言わずもがな。(大が多い)特に妖怪や人の心の闇を扱った作品に定評がありますが、今作は数少ないSFものです。

 舞台は近未来の日本。パンデミックにより天文学的多数の死者を出した世界の人々は強烈な監視社会のもと、物理的接触を避け、モニタと『端末』を通して他者と交流していました。その中で生きる主人公の牧野葉月は、数少ないリアルの知人の一人を殺人事件により失います。それをきっかけに葉月は事件の真相へ、そして人と向き合うことに踏み出すのです……。

 書いていて気づきましたが、このスジって『ハーモニー』に似ていますね……。こちらの方が先なのでパクリではありませんよ!『ハーモニー』は個人をリソースとして過剰に保護する社会に対する息苦しさ、さらにはそもそも人間の価値とは何か、ということがテーマだったと思います。『ルー=ガルー』は葉月が生きるということ、ひいては人と接するということを受け入れる、個人の成長物語です。

葉月に接したいと思わせる周りの仲間たちも華で、神秘的なボク女:歩未、天才発明少女:美緒、チャイニーズツンデレ:麗猫……。ちょっとミーハーな書き方をしてしまいましたが、樋口さんのこの女の子たちの描き方がとても可愛い。現在ネットで見られる画像だと伝わり辛いのですが、原作中での微妙な表情の揺れが胸を掴むんです!


(左下から美緒、麗猫、葉月、歩未。上の二人は原作で!笑)

とても可愛い。

大事なことなので二度言いました。京極さんの原作の冷たさと、樋口さんの絵の暖かさが同居するこの稀有な作品を読まないのはとてももったいないです!どうか目を離さないでください。

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