2017年1月7日土曜日

”深い共感の念が湧いた。”

今回も昨日までの流れに引き続き、僕の好きな冲方さんの作品について書きます~。この投稿のタイトルでどれを扱うか分かったら相当な冲方フリーク!答えはこれ↓



 冲方丁の名前を最初に広めた起爆剤は「マルドゥック・スクランブル」だと思います。僕も読みました、シュピーゲルの次、2番目に(オイ)。変わり種の自覚あります(;^ω^)。いやでもちゃんと2番目には読んだし!当時出てた作品の中では一番有名&評価高かったから! 
 
 最初に読んだ当時は素直に感動したのを覚えてます。格好良かったんですよね、ひたすらに。シュピーゲルと同じようなことを書いちゃいますが、バロットもとにかくヒドい目にあうじゃないですか。しかも一般向け文芸だから描写も酷で。蒸し焼かれて首切られて皮はがされて変態に追われるんですよ?
 そういう心折れて終わってもいいような状況から――実際一回折れてますし途中で濫用という名の闇堕ちしたりしますけど――顔を上げて、生きる方法を探して前に進むんです。むしろバロットの暗い面も正面から描かれたからこそ、その生に向かう過程の描写が真に迫って、嘘臭さ、フィクション臭さがなかった。人間はこうあるべきだ/自分もこうありたい、と思わせられました。以下に引用しますが、全てのストーリーが語られた上で描写されるこのシメの一文が、冲方さんの示したかった情景そのものだったと思います。
 
 “バロットは、そこに帰っていった。
自分が一度死んだ場所へ。
そこで生きるために。”
  ――マルドウック・スクランブル 排気〔完全版〕P298より

一通り冲方作品を読み通してきましたが、それら全てにこの「一度は挫折しても、最後には苦難を乗り越えて生きる人」の姿が描かれています。こんなありていな言葉でまとめるのは嫌だし申し訳ないけれど……。


名古屋ティアにはオリジナル作品を出す予定です。僕も冲方さんが描こうとしている情景に、またその景色が読者に与えている感動に、少しでも並び立てるような物語を描けるように頑張っています。そんな感動を自分の文章でたった一人にでも与えることができれば、僕にとってはたぐいまれなる価値があるからです。これも冲方さんの受け売りですが、“人類は価値のもとで努力し、挫折する。(中略)それが人類の尊厳”なのですから。(マルドウック・スクランブル〔完全版〕あとがきより)

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